波形分別型(PSD)プラスチックシンチレータEljen Technologies EJ276を購入し、幾つかの異なった条件の元でPSDシンチレータにおけるガンマ線と中性子線の分離能力の指標であるFigure of Merit (FoM)を測定した。FoMはガンマ線・中性子線のPSD分布の半値幅(W_g、W_n)とそれぞれのピーク中心間の距離Dから、FoM = D/(W_g+W_n) と定義される。本研究の目的は、ADCデジタザーで収集されたシグナルをFPGA上で高速にPSD波形処理を行うことで高ガンマ線バックグランド下において利用できる中性子トリガー検出器を開発することである。そのためにFPGAで実装するPSD解析のロジックは、FoMを最大化しつつも高速化のために簡素なものでなければならない。 幾つか異なった種類の光電子増倍管(PMT)と組み合わせて測定した結果、PMTの応答性能とADCデジタイザーボードのサンプリング周波数の組み合わせによってFoMの最適値が変わることが分かった。高レートでの使用を目的とするので本来であれば早い応答速度のPMTを使うのが適切であるが、実際には比較的遅いPMTのほうが良いFoMを出す傾向にあった。これはADCデジタイザーのサンプリング周波数が100MHz(10ns)と限られており、PSDは波形の立ち上がり時間から中性子による遅延発光時間までの電荷量と全体の電荷量の相対値を正確に測定する必要があるため、セルフトリガーでの波形サンプリングの場合、早い波形立ち上がり時間では電荷測定量のふらつきが大きくなるためと考えられる。 現在まで条件を変えつつ測定したFoMは最大でも~0.7となっており、まだ先行研究と比較しても改善の余地がある。100MHzサンプリングレートでの最適なFoMを達成するために、今後FPGAロジックも含めたシミュレーション等で最適なPMTを選出する必要がある。
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