研究課題
「あかり」衛星の近・中間赤外線カメラ (IRC) で所得した2.5-5ミクロンの近赤外線スペクトルと、Spitzer衛星で取得した5-35ミクロンのスペクトルをほぼ同じ領域から抽出する方法を確立した。この手法を用いて、銀河系内の星生成領域、Cep A のデータの解析を進めている。また系外銀河についてもNGC1097, M82などについて同様のデータ抽出を行い、フランスのグループと共同で、最新のダストモデルを用いた解析を進めた。この解析のためにフランス側から2週間にわたり来日した大学院生と共同研究を行なっている。また、近赤外線スペクトル3.4ミクロン付近にみられる脂肪族の特徴についていろいろな側鎖構造が多環式方向族炭化水素(PAH)に付着した場合の汎関数理論(DFT)を用いたモデル計算を行い、その帰属を明らかにした。C型小惑星のIRCの2-3ミクロン帯のスペクトルを解析し、22の小惑星に含水ケイ酸塩の存在を示すバンドを検出した。またこのバンドの中心波長と深さの相関から、熱変性を受けている可能性を見出し、さらに検討を進めている。さらに「あかり」衛星の全天サーベイデータとプランク衛星を用いた解析を星生成領域 λOri領域に対して行い、マイクロ波異常超過放射(AME)が回転しているPAHを起源とする仮説を示唆する結果を得た。この領域は、最近欧州側のグループによる詳細なAMEの観測が行われており、このデータを入手してさらに解析を進める準備をしている。これらと並行して、2021年度に打ち上げ予定のJWSTを用いて、「あかり」衛星で観測された超新星残骸や星生成領域の詳細な研究を進める観測計画の策定を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
小惑星の近赤外線分光、あるいはマイクロ波異常超過放射(AME)については、査読論文にまとめることができ、またさらに次の研究につながるデータ解析を進めている。「あかり」衛星とSpitzer衛星による 2.5- 35ミクロンの分光データを用いた解析も、フランスのグループとの共同研究が順調に進んでいる。これらの研究をさらに発展させることを目的としたJWSTへの観測提案についても、観測計画の策定を行なっている。またこれらの成果を3つの国際研究会で招待講演として発表しており、全体としては研究計画は順調に進んでいる。
「あかり」衛星とSpitzer衛星による 2.5- 35ミクロンの分光データを用いた解析については、CepAについては解析結果のまとめを進める予定である。また系外銀河についてもフランス側のグループとの議論を行い、解析を進め、まとめる予定である。AMEについては、欧州側で取得された新しいデータを用いた解析を予定している。これらと並行して、JWSTの観測計画を策定し、公募時間に応募する予定である。
2020年3月に共同研究を行っているフランスに渡仏し、議論する予定であったが、新型コロナウィルスのため実行できなかった。このため、渡航費の差額が生じた。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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