高速電波バーストについては、すばる望遠鏡を用いた追観測による研究を推進した。FRB 150418については母銀河候補として報告された銀河があるが、FRB母銀河と同定できるかはこの銀河の中心核活動が問題になっている。そこで、ジェミニ望遠鏡を用いて1年後に再観測を行い、この銀河の中心核の可視光での変動幅に上限値をつけた。同時に、この銀河に付随するFRB可視残光の明るさにも上限値が得られた。また、FRB 151230については、発生後数日で取得した、FRBの誤差領域をほぼカバーするHSC画像の解析から、これまでにない感度でFRBの可視光残光の探索を行うことができた。明確にFRB残光と思われる天体は見当たらなかったが、領域内に見つかった超新星のうち、タイミングと赤方偏移がこのFRBと無矛盾で、かつ、減光が速い珍しいタイプの超新星が一天体見つかった。現時点でFRBの対応天体と結論づけることはできないが、興味深い結果である。また、Ia型超新星が付随して起きるというシナリオに対して、これまでにない厳しい上限値をつけた。ガンマ線バーストについては、宇宙再電離シミュレーションデータを用いて、現実的な中性水素分布からスペクトルに現れる減衰翼の形を計算し、それに対してモデルフィットをシミュレートすることで、将来の高赤方偏移GRBから再電離の進行状態をどれだけ正確に測定できるかを調べた。その結果、一様密度を仮定したシンプルなモデルフィットでも、その時の宇宙の中性度をよく再現できることがわかった。将来、多数の高赤方偏移GRBのスペクトルが得られれば、GRBを用いて宇宙再電離史を正確に明らかにできるという見通しが立ったと言える。
|