広視野サーベイ観測の解析に関して多くの成果を得た。銀河団について、すばるHSCサーベイの銀河団ワーキンググループとX線全天サーベイ観測計画eROSITAチームとの共同研究により銀河団の性質の理解を深める研究について大きな成果を得た。特に、可視の銀河の色で選ばれた可視銀河団、弱い重力レンズで選ばれた重力レンズ銀河団、X線で選ばれたX線銀河団の詳細な相互比較が初めて可能になり、X線が効率のよい銀河団発見手法を提供することを示した。この成果は今後のX線銀河団を用いた密度揺らぎの詳細測定の道を拓く重要な成果である。 またすばるHSCサーベイの重力レンズ解析も進めた。三年度データの重力レンズ銀河形状カタログを作成し、その宇宙論解析を進めた。重力レンズシアの二点相関解析、また銀河クラスタリングと組み合わせた解析を進め、ブラインド解析及び保守的なパラメータ設定により信頼度の高い密度揺らぎ測定が達成できた。特に、Oguri & Takada (2011)で提唱した、重力レンズ銀河の赤方偏移を自己較正する方法を初めて実データで実証し、信頼度の高い密度揺らぎ測定に結びつけることができた点は非常に大きな成果と言える。また上記の手法と相補的な手法として、重力レンズ地図のピークから銀河団を検出し、その数から密度揺らぎを測定する研究についても、詳細な模擬観測シミュレーションによりデータの非一様性を補正する手法が確立できたことから、信頼度の高い測定の目処がたったことは重要な成果である。
|