研究課題
中性子星(NS)の磁場は10の12乗ガウス程度が標準とされるが、近年ではその100~1000倍もの超強磁場をもつ孤立NSとして、マグネターの存在が確立してきた。マグネータの生成環境およびその超強磁場の起源を探るべく、今年度は以下の4つの研究を並行して進めた。[1] マグネターなみの超強磁場をもつNSを、連星X線源の中に探査すること。理研の谷田部らの協力を得て、国際宇宙ステーション搭載MAXI装置のデータを解析した結果、連星X線パルサー X Persei がマグネターに匹敵する超強磁場を持つことを観測から突き止めることに成功し、論文として出版した。[2] 東大の米田らとともに、「すざく」およびNuSTARのデータから、ガンマ線連星 LS 5039が 8.96秒の自転周期をもつNSであることを発見し、超強磁場をもつ可能性も高いことを検証しつつあり、学会発表を行った。[3] 超強磁場天体が連星中に見出された場合、連星環境を利用し、標準磁場NSと質量の違いがあるか調べること。これに関しては Perseiが太陽質量の2.03+-0.17倍の質量をもち、通常NSの質量 (太陽質量の1.4+-0.2倍)より有意に重いことを世界で初めて突き止めた。またLS5039も同様な性質をもつ可能性が高いことを発見した。[4] マグネターの自由歳差運動の検出例を増やし、内在磁場の情報を増やすこと。マグネター 4U 0142+61の自由歳差運動(スリップ周期55 ksec,「すざく」で発見)を、NuSTARのデータを用いて追認することに成功し、論文として出版した。東大の丹波および會澤の協力の下、「すざく」とNuSTARで観測されたマグネター SGR1900+14 からも、スリップ周期 42 ksecをもつ自由歳差運動を発見し、この挙動を示す三例目のマグネターとして学会発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
・X Perseiは1970年代から知られた連星X線パルサーで、その挙動にはいくつかの特異性が報告されていた。それらの特異性が、 (0.4-2.5)×10^{14}ガウスという超強磁場のためであると解明できたことは快挙と自負する。・LS 5039ではパルスの発見により、この天体がブラックホールかもしれないという説を完全に否定することに成功し、またこの天体からのTeVエネルギーに達するガンマ線放射は、主星からの星風がマグネターの強烈な磁場に衝突し、電子が加速される結果という描像を得て、新しい粒子加速機構に光を当てることに成功した。・X PerseiおよびLS 5039が、ともに標準的NSより重い可能性が高いという発見は、NS核物質の状態方程式や、超強磁場の起源に、大きな知見であり、世界に誇る独創的成果と言える。・SGR 1900+14からの自由歳差運動の発見は、牧島がこの5年ほど追求して来たテーマを強化するものであり、世界で誰ひとり着想しなかった独創的な成果である。これによりマグネター内部に潜む超強磁場の様子がわかってきた。・以上のように研究は、予想以上にスムーズに進みつつある。
2019年度は、以下の4つの研究を並行して進める。(1) LS 5039に含まれるNSが、マグネター並の超強磁場と通常NSより重い質量をもつことを確立し、論文として出版する。(2) マグネター1E 1547+54 から「すざく」で検出した、スリップ周期 36 ksecの自由歳差運動を、NuSTARのデータを用いて追確認する。すでに目星はついており、あとは論文執筆である。(3) 新たにSGR 1900+14から発見した自由歳差運動の解析を完遂し、論文として出版する。(4) X Perseiと同様な長周期をもつパルサーとして、4U 0114+65のデータ解析に着手する。
論文投稿料(2点の合計)が、予想よりやや安かったため。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 71 ページ: ID 15, 1-19
10.1093/pasj/psy129
巻: 70 ページ: id.89, 11 pp
10.1093/pasj/psy088