研究課題
昨年度は、「すざく」とNuSTARの硬X線データを解析することで、代表的ガンマ線連星LS 5039から、約9秒周期のパルスを発見し、この系のコンパクト天体が中性子星であることを明らかにした。さらにエネルギー収支、パルス周期とその変化率、質量降着の兆候が無いことなどから、この中性子星はマグネター級の超強磁場をもつことを論じ、本年度には首尾よく投稿論文が受理された。この発見により、(1) LS 5039のコンパクト天体をブラックホールとみなす従来の説を否定することに成功し、(2)この天体からのTeVに達するガンマ線放射は、主星からの星風がマグネターの強磁場に衝突し、電子が加速される結果であるという新解釈に到達し、(3) X Perseiに続き、マグネター級の磁場をもつ中性子星を連星中に発見することに成功した。もう1つの柱として、マグネターが内部磁場の応力で軸対称に変形し、自由歳差運動を行うという、牧島がこの6年ほど追求して来たテーマを強化した。マグネター1E 1547-5408では、歳差運動に伴うパルス位相変調の振幅が、22 keV付近で共鳴的に増大するという新発見を昨年度に行っており、今年度は結果を論文として公表した。SGR 1900+14からは3例目となる自由歳差運動を発見し、それに伴うパルス位相変調の様子が、やはりエネルギーに強く依存することを発見した。こうして「マグネター並の強磁場をもつ中性子星を連星中に発見する」という、本研究の目的は十分に達せられた。他方、磁気変形したマグネターの自由歳差運動に伴う、硬X線のパルス位相変調は、複雑なエネルギー依存性を持ち、超強磁場の物理学に重要な手掛かりを提供してくれることが判明した。そこで本研究は2020年度をもって終了し、2021年度からは新規採択の基盤研究(C)「中性子星の内部に潜む磁場の観測的推定」にて研究を継続する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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