研究課題/領域番号 |
18K03695
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 将郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20334245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 星震学 / 恒星振動 / 赤色巨星 / 主系列星 |
研究実績の概要 |
本研究の目的では、一部の低質量赤色巨星において、特定の振動モード(双極子モード)の振幅が小さくなっている現象の原因を追究することにある。振幅の減少度合いは、赤色巨星の進化段階に依存し、進化段階が早いほどより振幅が小さくなることが知られている。そこで前年度より、このような進化段階への依存性を調べるべく、同じ質量の赤色巨星になる前の段階の星の構造を星震学の方法で調べることにした。 双極子モードの振幅が小さくなっている赤色巨星の質量は、太陽の1.1倍から2倍程度の範囲にあるが、特に1.5倍程度からその割合が多くなる。太陽の1.5倍程度の質量をもつ主系列星で、振動を示すものにかじき座ガンマ型星があるので、本研究ではとくにこの型の脈動変光星に着目した。かじき座ガンマ型星は20世紀半ばにはその存在が認識されていたが、振動の周期が約1日であるため、地上観測によって振動の性質を調べることは困難であった。ところが、最近の宇宙探査機(特にNASAによるケプラー計画)により、この問題が一挙に解決され、ようやく振動の周期や振幅を正確に決められるようになった。 このような背景に基づき、本研究では前年度に引き続き、振動の周期から内部構造の情報、特に内部の自転周期や質量の中心集中度(進化段階の目安)を求める独自の方法を考案した。前年度は、一部のモード(ケルビン・モード)のみを用いる方法を考案したが、今年度は別のモード(ロスビー・モード)の情報もあわせて考慮できるように方法を拡張した。今後は、この方法をケプラー探査機で観測された多くのかじき座ガンマ型星に適用し、内部構造の進化を観測的に明らかにし、また赤色巨星のように、一部の星に異常な特徴が見られないかどうかを調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、双極子モードの振幅が小さくなっている赤色巨星と同程度の質量を持つ主系列星の内部構造を調べる方法を発展させ、従来は考慮できなかったロスビー・モードと呼ばれる振動モードの情報も加味できるようになった。一方で当初予定していた多くの星への適用については、次年度への継続課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
かじき座ガンマ型星の内部構造を調べる方法をさらに改良して、内部構造のより詳細な情報(微分回転や質量混合過程)を得られるようにすることを目指す。また、ケプラー探査機によりすでに数百個にもおよぶかじき座ガンマ型星のデータが得られているので、今後はこれらの星に開発した方法を適用する。これにより、内部構造の進化を観測的に明らかにし、また赤色巨星の場合のように異常な振る舞いをする星を同定できるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際研究会への参加を計画していたが、研究会自体が延期、ないし取りやめになったため、次年度使用額が生じた。これらは次年度に物品費および旅費として使用する予定である。
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