研究課題/領域番号 |
18K03696
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 尚孝 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員准科学研究員 (20722804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超新星 / 暗黒エネルギー / 宇宙望遠鏡 / すばる望遠鏡 / 赤外線天文学 / 白色矮星 / 較正 / 黒体輻射 |
研究実績の概要 |
本研究では、すべての宇宙観測の礎となる、星の明るさの較正を紫外、可視、赤外の広い波長域で1%以下の誤差で正確に求め、世界基準の構築を目指している。現在は1%の精度は達成できておらず、宇宙を加速膨張させている謎の暗黒エネルギーの精密測定の障害となっている。星の明るさの較正は、従来の方法では精度に限界が来ており、新しい手法の導入が望まれる。我々はこの精度を一桁向上させることを目標としている。 黒体放射のスペクトルを持つ白色矮星の観測を紫外から可視光、赤外線まで観測するには宇宙望遠鏡による観測が必要である。ハッブル宇宙望遠鏡の観測時間を獲得し、ジャイロの故障により、スケジュールに遅れが出てしまったが、紫外、赤外波長領域の撮像データ及び分光データを取得することができた。 地上大型望遠鏡による追観測も進めている。新型コロナ感染症の影響で望遠鏡群が稼働していない時期があり、観測が実行されない時期があった。また、悪天候等により観測できない時期が続いたが、日本のすばる望遠鏡、カリフォルニア大学のケック望遠鏡で分光観測することができ、これまでのリストに加えることができた。 欧州のGAIA衛星の分光データが公開され、英国から共同研究の申し出があり、新たにGAIAデータから見つけられた200個の天体をカリフォルニア大学のリック天文台、欧州のVLT、米国のSOAR望遠鏡を使って分光観測を進めている。また、赤外領域での観測も進めており、可視光から赤外までの統一を目指し、鋭意観測を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地上望遠鏡による追観測は望遠鏡時間を何度も獲得したが、新型コロナ感染症の影響で望遠鏡の稼働が止まってしまい、観測できなかった時期があった。また、ハワイ島マウナケア山頂の雪による悪天候や、機器の故障等により、不運にも20晩以上観測機会を失ってしまった。その一方、欧州の位置天文衛星GAIAの新しいデータDR3が公開され、我々の天体の距離と測光の精度が向上した。これまでのデータと合わせ引き続き解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られたハッブル宇宙望遠鏡のデータ解析と地上望遠鏡による分光データの追観測データを統合し、また新しいGAIA衛星のデータとも合わせ総合的な解析を進めている。今後とも引き続き望遠鏡時間を獲得すると共に、観測を継続する。分光データが揃い次第、解析と論文化を進める。JWSTの解析チームと協力し、Cycle2での観測計画に応募した。赤外望遠鏡、LSSTでの標準観測を目指し、データ提供を展開して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた分光観測が、悪天候、機器の故障、コロナによる中断等により遅れ、現在もデータの取得が進んでいる。今期は16晩、来期は10晩の観測を予定しており、これらの観測で得られたデータを解析し、論文化及びデータ公開を進める予定である。
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