研究課題
本研究課題の目的は、クェーサーによる2つのスケールでのフィードバック効果を検証することである。アウトフローによる小スケールフィードバックがホスト銀河の星形成活動を抑制する(テーマ1)のに対し、紫外輻射による大スケールフィードバックはクェーサー近傍数メガパーセク以内における銀河間物質の電離状態に影響を与える(テーマ2)。テーマ1に関し、幅の広い吸収線 (Broad Absorption Line; BAL) をもつクェーサー11天体の高分散分光データを解析したところ、およそ3割のクェーサーが幅の狭い吸収線 (Narrow Absorption Line; NAL) を有することが分かった。これは、BALとNALはアウトフローを見込む角度の違いを反映しているという従来のモデル(角度依存説)を否定する結果である。また一部のNALガスは光源から100kpc程度以上も離れている可能性があり、アウトフローはホスト銀河のみならず、その周囲の銀河周辺物質にもフィードバック効果を及ぼす可能性があることが分かった。ここまでが本年度の研究成果である。研究期間全体を通して、我々はクェーサーによるフィードバック効果を、ホスト銀河スケールから銀河間空間スケールに至るまで、幅広く包括的に検証した。クェーサーフィードバックは銀河形成・進化に影響を及ぼすだけでなく、宇宙再電離にも部分的に寄与したと考えられるため、その詳細な理解は極めて重要である。研究期間全体を通して我々が得た具体的な研究成果は、上述の今年度の成果に加え、1)視線速度変化に敏感なNALを用いたAGNアウトフローの加速度の測定、2)クェーサーに起源をもつNALカタログの作成、3)超高光度クェーサーにみられるBALの諸性質の解明、などがあげられる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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