研究実績の概要 |
相対論的輻射流体力学は、適切なクロージャー関係が未発見なため、モーメント方程式系をうまく閉じさせることができない。本研究では、平行平板や球対称など簡単化した状況で、相対論的輻射輸送方程式を厳密に解いて適切なクロージャー関係を見いだし、限定的ではあるが、相対論的輻射流体力学の定式化を完成させることを目的とした。それらの基礎方程式系は、ブラックホール周辺での高エネルギー現象に適用できる。さらに、現在はまだほとんど研究されていない、相対論的輻射流体力学における振動現象や波動現象や安定性などの基礎研究も行った。 まず、基礎研究部分については、平行平板流や球対称流などである程度は実績を積んできた。さらに、降着円盤の強い輻射場によって鉛直方向に駆動される輻射圧駆動風を、輻射場と流体場の二重逐次近似で解くことができた(Takeda and Fukue 2019)。 また、輻射流体力学における波動現象の一つとして、輻射性衝撃波の問題に取り組んだ。まず、円盤降着流においてはじめて輻射性衝撃波の問題を取り扱い、衝撃波前駆領域の構造を解くことに成功した(Fukue 2019a, b)。さらに相対論的な輻射性衝撃波についても、1次元輻射性衝撃波の構造を解くことにも成功した(Fukue 2019b)。球対称降着流における輻射性衝撃波についても構造解析を行った(Fukue 2019d)。 これまで培ってきた知識や手法を用いて、標準降着円盤の鉛直方向の構造について、非常にシンプルな解析的モデルを作ることにも成功した(Fukue 2020a)。同じく副産物として、光り輝く星団からの輻射圧駆動星団風についても調べた(Fukue 2020b)。 最後に、長年の懸案であった、輻射圧駆動ブラックホール風について、詳細な解析も行った(Yamamoto and Fukue 2020)。
|