研究実績の概要 |
本研究は、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計「ALMA」を用いた観測、及び既存のALMAのアーカイブデータを解析することにより、生まれて間もない、年齢が10万ー100万年程度の星「原始星」周囲での惑星形成を調べることを目的とする。このため、本研究では原始星周囲での分子ガスと個体微粒子「ダスト」からなる円盤の構造、運動を詳細に調べ、原始星円盤での惑星形成の兆候を探る。 原始星L1489 IRSのALMA観測においては、円盤が半径200天文単位を境に傾きが異なっている「ワープ円盤」の様相を示していることが明らかになった。このようなワープ構造は、円盤の外側の分子ガスの構造「エンベロープ」の回転軸が円盤と異なっており、そのエンベロープのガスが円盤に降り注ぐことにより形成されていると考えられる。円盤は全体の半径が600天文単位であり、太陽系の回転運動「ケプラー回転」をしている。このようにワープしたケプラー円盤の存在は、様々な軌道傾斜角をもつ惑星系の形成のメカニズムと関連していると考えられる。 一方、双子の原始星「原始星連星」に付随する円盤「周連星系円盤」のALMAによる詳細観測も行なった。太陽質量程度の星の過半数は連星であり、連星の周囲を周回する惑星系も多く見つかってきている。このため、周連星系円盤の詳細観測は、惑星形成の一般的描像を得る上で不可欠である。原始星連星 L1551 IRS 5, L1551 NE のALMA観測の結果、周連星系円盤は二つの渦巻腕の構造よりなっていることが明らかになった。さらにL1551 IRS 5周囲の円盤はL1551 NEと比べて小さく、円盤の構造に磁場の影響が効いている可能性も示唆された。 さらに、上記の目的を達成するための大型のALMA観測計画「eDisk」の観測プロポーザルを採択させることができた。
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