研究課題/領域番号 |
18K03704
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
北山 哲 東邦大学, 理学部, 教授 (00339201)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銀河団 / X線 / ミリ波サブミリ波 |
研究実績の概要 |
2021年度は、X線天文衛星チャンドラによって取得された高空間分解能X線データを用いて、計28個の近傍銀河団の内部構造に関する系統的な研究を行った。これらはいずれも、力学的に安定した状態に達していると従来は考えられていた銀河団だが、本研究の結果、その全てに顕著な擾乱が存在することが明らかになった。擾乱の度合は、温度差にして20%程度、エントロピー差にして40%程度である一方で、ほぼ等圧(圧力差はゼロと整合)が保たれていることがわかった。また、このような擾乱は、銀河団のつくる重力場に引き寄せられて周囲から降着してきた物質が、銀河団内部を行き来することに伴って生成され得ることを、大規模数値シミュレーションの結果との比較によって示した。これらの成果は、宇宙の大規模構造形成に伴い、銀河団中の擾乱が普遍的に生じる可能性を強く示唆しており、査読付き論文として国際的な学術誌に掲載された。 また、赤方偏移1程度に位置する二つの遠方銀河団を、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いて長時間観測したデータが取得されたので、解析を進めた。その結果、高温電子が宇宙マイクロ波背景放射光子を散乱した結果であるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果が、いずれの銀河団からも有意に検出されたので、その成果と意義をまとめた論文を準備中である。 さらに、X線天文衛星チャンドラ、ALMAそれぞれを用いた公募観測の提案を行うとともに、大型サブミリ波望遠鏡(LST)をはじめとする将来計画に対する検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい研究成果が得られ、順次論文として発表しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果をさらに発展させつつ研究を進めたい。特に、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いた銀河団プラズマの研究に関して、新しい解析結果が得られたので、その出版に重点をおく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、旅費の使用が困難となったために未使用額が生じた。次年度に状況が改善すれば旅費等として使用することを計画している。
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