研究課題
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いて、赤方偏移1付近に位置する二つの遠方銀河団 RCS J2319+0038 および HSC J0947-0119 を長時間観測した結果、これらの銀河団中の高温電離ガスによるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果を高精度で検出し、その空間構造を明らかにすることに成功した。これにより、いずれの銀河団に対しても、中心部における圧力分布は、近傍宇宙で冷却コアをもつ銀河団の平均に比べて、はるかに緩やかであることがわかった。また、RCS J2319+0038 に対しては、X線天文衛星チャンドラのデータと組み合わせることで、同銀河団の温度と密度の空間分布を分離測定するとともに、エントロピーおよび冷却時間の空間分布を得た。この結果、RCS J2319+0038 中心部では、電離ガスが熱エネルギーを失って冷却されたコアを形成しつつあるが、その度合いは近傍宇宙におけるよりもはるかに弱いことが明らかになった。一方で、HSC J0947-0119 に関しては、すばる望遠鏡による可視光データなどと比較を行ったところ、冷却されたコアの兆候は得られず、銀河団衝突の強い影響を受けていることが示唆された。以上は、個別銀河団における熱力学的量の空間分布としては最遠方の宇宙における結果の一つであり、これらの銀河団が近傍宇宙とは大きく異なる性質をもつことを示している。また、X線天文衛星 XMM-Newton による近傍銀河団 CIZA J1358.9-4750 の観測データを調査した結果、この銀河団中に従来知られていなかった衝撃波面の存在を明らかにすることに成功した。さらに、次世代電波分光器DESHIMA2.0を用いた銀河団観測の可能性についても定量的な評価を行い、今後の観測計画の立案に貢献した。以上の成果は、いずれも査読付き論文として国際的な学術誌に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
新しい研究成果が得られ、順次論文として発表しているため。
これまでに得られた成果を、学会などで発表していくことを計画している。
2020年度から2022年度にかけての新型コロナウィルス感染対策強化に伴い、対面での研究発表の機会が著しく減少したため、未使用額が発生した。2023年度の感染対策緩和後に、可能な範囲で研究発表等のために使用することを計画している。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 ページ: 311~337
10.1093/pasj/psac110
巻: 75 ページ: 37~51
10.1093/pasj/psac087
Journal of Low Temperature Physics
巻: 209 ページ: 278~286
10.1007/s10909-022-02888-5
Proceedings of SPIE Astronomical Telescopes and Instrumentation
巻: 12181 ページ: 1218122
10.1117/12.2628772