研究課題
本課題の研究期間は当初2022年度末で終了する予定だったが、2023年5月に新型コロナウィルス感染症に伴う行動制限が解除されることをふまえ、対面での研究発表を実施することを主な目的として補助事業期間を1年間延長した。この方針に基づき、2023年度は、特にアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いたスニヤエフ・ゼルドビッチ効果の高角度分解能観測の結果と意義について、国内学会および国際会議等において発表した。本課題の研究期間全体を通じて、赤方偏移0.6に位置するフェニックス銀河団(SPT-CLJ2344-4243)、および赤方偏移1付近に位置する RCS J2319+0038、HSC J0947-0119 の計3天体からのスニヤエフ・ゼルドビッチ効果の測定に成功し、各銀河団の熱力学的な性質を明らかにした。特に、天文衛星チャンドラによって取得されたX線データとALMAによるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果データを組み合わせると、従来困難であった遠方銀河団の温度分布が精度よく測定できることが立証された。その結果、SPT-CLJ2344-4243 においては、近傍銀河団では見られないような電離ガスの過冷却(いわゆるクーリングフロー)が起こっていることが判明した。一方で、RCS J2319+0038、HSC J0947-0119 ではそのような過冷却は見られず、近傍銀河団よりもむしろ電離ガスの冷却が弱いことがわかった。これらの結果は、赤方偏移1から0.6 の間に、電離ガスの冷却効率の大きな変化が生じた可能性が高いことを示唆している。これらの成果は、いずれも査読付き論文として国際的な学術誌にも掲載済である。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
天文月報
巻: 117 ページ: 92-101