研究課題
超光度X線源(ULXとも呼ばれる)は、太陽光度の100万倍を超える膨大な光度を持つコンパクト天体であるる。銀河の中心部に位置しないことから、活動銀河核ではないことがわかっているが、その正体はよくわかっていない。ブラックホールや中性子星への超臨界降着(降着率がエディントン限界を超える降着流)がエネルギー源であるという示唆もあるが、決着には至っていない。この問題を解明するには、磁気流体力学に輻射輸送と一般相対性理論を組み合わせた一般相対論的輻射磁気流体シミュレーションによってブラックホール及び中性子星周囲の降着・噴出流の構造を解明し、結果を観測と比較する必要がある。本年度は、回転するブラックホールへの超臨界降着について、一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションを実施した。使用したコードは、昨年度までに開発および最適化を行ったものである。その結果、解放されるエネルギーは、ブラックホールの回転によらず、エディントン光度を超えることがわかった。この結果は、超臨界降着がULXのエネルギー源であるという仮説をサポートするものである。また、ジェットのエネルギーと放射のエネルギーの比は、ブラックホールのスピンパラメータが大きいほど高い値を示す。したがって、この比が大きなULXの中心ブラックホールは大きなスピンパラメータを持つ可能性が高いこともわかった。また、磁化した中性子星への超臨界降着流についてもシミュレーションを行った。中性子星周囲には磁気圏が形成され、降着円盤のガスは最終的に磁極へと降り注ぐことになる。ただし、一部のガスが輻射圧で吹き飛ばされるため、ガス噴出流の光球面は中心から数百から数千キロに位置することになり、そこから0.1-1keV程度の黒体放射が発せられることがわかった。この結果は、系内の突発的なULXの特徴とよく一致する。
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