研究実績の概要 |
本研究は、活動銀河核(Active Galactic Nuclei : AGN) のエネルギー源である降着物質が大質量ブラックホール周辺になす分子ガストーラスを観測し、密度・質量降着率・および角運動量輸送の鍵となる磁場を計測するものである。KVN (Korea VLBI Network) によって電波銀河NGC 1052を観測した結果、HCNおよびHCO+分子の吸収線を検出し、その空間分布からジェットに垂直なトーラス状に高密度分子ガスが存在し、回転に加え中心へ降着していることを明らかにした。この結果は査読論文 (Sawada-Satoh S., et al., 2019, ApJ, 872, L21) に報告した。さらにALMA望遠鏡によってNGC 1052のトーラスにおける多種の分子吸収線 (CO, HCN, HCO+, SO, SO2, CN, CS) および同位体 (H13CN, HC15N, H13CO+) や振動励起吸収線 (HCN v2=1, HCO+ v2=1) を発見した。また、ALMA望遠鏡によって5天体の電波銀河を観測し、そのうち4天体にトーラス起因の分子吸収線を検出した。これらの結果は国際研究集会 (Torus 2018) にて招待講演で報告し、査読論文を準備中である。 加えて、トーラスの磁場を計測する目的でALMA Cycle6に偏波観測を提案し、2天体の電波銀河の観測が採択され、2019年4月までに観測が実行された。観測データが配布され次第、解析を行う。
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