研究課題/領域番号 |
18K03715
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
辻本 匡弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10528178)
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研究分担者 |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90323782)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙機 / マイクロ波背景放射 / 宇宙線 / デジタル信号処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である LiteBIRD 衛星軌道上デジタル処理機器の設計において大きな進展があった。まず、当初設定した目的を越えて、宇宙線の影響の評価について、end-to-end の評価を行うことにした。太陽・地球系第二ラグランジュ点において期待される宇宙線環境から始め、粒子シミュレーションを行なって検出器 wafer に deposit されるエネルギー量と分布を求め、熱シミュレータにより超伝導遷移端検出器までの伝熱を計算し、回路シミュレータにより電気的応答を計算、それを CMB 掃天シミュレータで空間スペクトルに焼き直して、偏光の角度スペクトル換算での宇宙線の評価を初めて行った。国際学会での発表、紀要、修士論文として発表し、現在投稿論文の内部回覧中である。
また、軌道上データ圧縮についても、LiteBIRD の模擬時系列観測データを初めて作成した。上記の宇宙線信号だけではなく、前景放射や偏光変調器による3K放射からの偏光への漏れ込み、衛星スキャンストラテジに基づく模擬掃天観測など、最新の衛星設計を取り込んだ現時点で最も現実的なデータである。この時系列データの情報エントロピーに基づいてデータ圧縮率を求め、情報を落とすことなく軌道上の処理で圧縮率の要求を満たすことを示した。
更に、市販のボードを用いて軌道上デジタル処理機器のブレッドボードモデルを作成し、軌道上で行う処理の一部を FPGA で実装し、その機能を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したこと以上に進展したことは、宇宙線の物理モデルの完成である。これにより、直交する偏光信号を受信する検出器への common-mode ノイズの除去という重要な効果に気づき、検出器面設計の最適化を検討できた。また、不確かだったデータ圧縮についても現実的なデータを元に定量的な見積もりを行えたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
目標としていたブレッドボードモデルの製作は導入にとどまった。実装すべきアルゴリズムは完成しているので、FPGA実装の完成は今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 により実験室で行う研究がやや遅れた。国際学会での発表を半年遅らせ、今年度前期の学会で発表する。そのための登録料として使用する計画である。
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