研究課題
極低温の星間分子雲における初期分子進化過程の全容を解明するために、氷星間塵内部に取り込まれた原子・分子の反応プロセスの理解が重要である。本研究は、水素原子が氷内部に侵入し拡散していくかどうかを明らかにすることを目的とし、そのための研究手法確立を目指している。平成30年度は、超高真空・極低温実験装置を用いて、キセノン(Xe)への水素原子付加体(HXeH)、及び一酸化炭素(CO)への水素原子付加体(HCO)の赤外吸収スペクトルによる検出を試みた。10K程度に冷却されたAl基板上にXeガスを蒸着したのち、水素原子源により生成させたH原子を照射した。しかしながら、HXeHは検出限界以下であった。その原因として水素原子の供給量が不足していた可能性、もしくは、赤外吸収分光計の感度不足が考えられる。前者に対しては水素原子源の改良、後者については光学系の見直しを行う必要がある。また、COへのH原子照射では、HCOが赤外吸収スペクトルにより検出可能であることが確認された。したがって、当初の研究計画に従い、COをプローブとした水素原子拡散の研究を進めることが可能と考えられる。国立交通大学(台湾)のYuan-Pern Lee教授との共同研究として、芳香族化合物へのプロトン付加・水素原子付加反応の研究を行った。3-hydroxypyridine (C5H4OH(N))についての研究成果をThe Journal of Chemical Physicsに、Corannulene (C20H10)についての成果をACS Earch and Space Chemistryに発表した。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した実験を順に遂行することが出来ているため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
既存の研究計画に基づき研究を進める。
物品費の使用額が請求額未満であったのは、研究グループで現有の装置で実施可能な実験を行い高額の設備備品の購入が不要であったため。ただし、これらの備品を使用する実験を翌年度に計画している。計画書に記載した国内学会への参加をせず研究(実験)にエフォートを割いたため、旅費の支出額が0となった。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 149 ページ: 014306~014306
https://doi.org/10.1063/1.5038363
ACS Earth and Space Chemistry
巻: 2 ページ: 1001~1010
10.1021/acsearthspacechem.8b00089
Chemistry A European Journal
巻: 24 ページ: 18801~18808
https://doi.org/10.1002/chem.201804657