研究課題
2019年中に見いだされた現象「Layer状の氷(H2O氷でカバーされた一酸化炭素(CO)固体)へのH原子照射実験を行うと、COとH原子の逐次的水素化反応生成物(H2CO及びCH3OH)が生成すること、及び、COの逐次的水素化反応は、比較的分厚い氷(10層以上)、且つ、比較的高い温度条件(>20 K)で効率よく起きること」についての考察を進めた。その結果、当初の狙い通り、水素原子が氷内部に侵入・拡散して氷内部に存在する基質と化学反応を起こすことが明らかとなった。また、反応速度の遅いCOへの水素付加反応が観測されたことは、氷内部に水素原子が長時間留まるような特異的な反応環境が実現されていることを意味する。水素原子拡散の機構を議論するために、基質として酸素分子を用いてH/D置換効果を調べた。酸素分子に水素が付加する反応に際立った同位体効果が見られなかったことから、氷内部での水素原子拡散は(量子トンネル効果ではなく)熱拡散により起きていることがわかった。以上の研究成果をThe Astrophysical Journal誌に発表した。透過型電子顕微鏡観察と赤外吸収分光法を組み合わせた研究により、結晶質CO2が紫外光照射により非晶質化しないことを明らかにし、Chemical Physics Letter誌に発表した。本研究結果は氷星間塵の低温環境下における熱履歴を議論する上で重要となる。国立交通大学(台湾)のYuan-Pern Lee教授との共同研究として、芳香族化合物へのプロトン付加・水素原子付加反応の研究を引き続き行った。Aniline (C6H5NH2)の水素化についての研究成果をJournal of Physical Chemiistry Aに発表した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件)
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