本年度は、コンドルールに対する新たなアルミニウム-マグネシウム(Al-Mg)年代データを得るため、始原的なLコンドライトである Northwest Africa (NWA) 7936隕石から新たにコンドルールを切り出し、鉱物分離を試みた。しかしながら、保有している隕石チップからは大きなコンドルール(直径数ミリメートル以上)が回収できず、鉱物分離後に得られた試料は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)に必要な量に達しなかった。そのため、残された研究期間を考慮して、新たな分析は今後の研究にゆだね、今回は、既に得られたデータの詳細な吟味と、既に公表されている関連論文のレビュー・検証を通じて、初期太陽系におけるアルミニウム26(26Al)の分布(26Al/27Al比の均一性・不均一性)に関する現時点における知見の正確な評価をおこない、今後の研究の進展に資することとした。 本研究での分析により、このL3コンドライト中のコンドルールのMg同位体比(26Mg/24Mg)は地球のMg同位体比と比べて非常に低い値(-10から-20 ppm)を持つことが判明した。ここから推定される太陽系の初生(26Mg/24Mg)比は、この値よりもずっと低くなければならず、26Al分布の均一性を仮定した場合の太陽系初生値(-38 ppm)と整合的である。一方、26Al分布の不均一性を示唆する論文が公表されているが、用いられている鉛-鉛(Pb-Pb)絶対年代測定法による難揮発性包有物(CAIs)の年代に不自然なばらつきがあり、CAIのデータの取扱い如何によっては結論が変わり得ることが示された。コンドルールのPb-Pb年代データはまだまだ不足しており、今後、複数のラボによる検証を必要とする。 本年度は、他に、太陽宇宙線の影響が示唆されるCAIについて、Al-Mg年代データを含む論文(共著)を公表した。
|