研究課題/領域番号 |
18K03730
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
伊藤 孝士 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 講師 (40280565)
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研究分担者 |
吉田 二美 産業医科大学, 医学部, 助教 (20399306)
樋口 有理可 産業医科大学, 医学部, 助教 (90597139)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オールト雲 / 彗星 / 海王星以遠天体 / 冥王星 / 共鳴 / 極回廊 |
研究実績の概要 |
まず前年度までの継続として、オールト雲の成長と同時進行で惑星領域に落ちて来る新彗星の軌道進化を数値実験により追い掛けた。とりわけオールト雲からやって来る天体が海王星以遠天体(TNO)やケンタウルスなど他の小天体群へ一時的にでも遷移する実態の解明に注力した。オールト雲からやって来る天体は離心率・軌道傾斜角とも大きいため、遷移できる小天体群は限られる。けれどもdetached TNOsへの遷移確率は有意であることが分かった(数%)。また既に三次元化しているであろう現代の外部オールト雲からはほぼ等方的に彗星が落下するので、いわゆる極回廊(polar corridor. 軌道半長径が30天文単位から1000天文単位、かつ軌道傾斜角が60°から120°)を通過する天体も有意に多い可能性が判明した。この経路はオールト雲天体が惑星領域へ落下する際に重要となるだけではなく、太陽系外から飛来する天体(extra-solar objects)が太陽系に接近する際に取る経路にもなり得るので、今後の各種観測に於いては着目すべき重要な領域となり得る。 次には平均運動共鳴といわゆるvon Zeipel-Lidov-Kozai振動の相互作用による天体の安定性を解明するために、冥王星を例にした幾つかの数値実験を行った。具体的には冥王星のような小天体の近日点経度に対する巨大惑星の重力的な効果を明らかにするために、惑星の軌道配置を人為的に変更して冥王星の軌道伝搬を計算した。その結果、巨大惑星の現在の軌道構造が冥王星の近日点の秤動を実現しているものの、それはほぼ偶然であり、軌道構造が現在のものから少しずれただけで冥王星の軌道は短時間のうちに不安定化することが判明した。
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