研究課題
2010年にボイジャー1号が到達した太陽系の外側の領域(星間雲)と太陽から放出されるプラズマの流れ(太陽風)の圧力バランスによって、太陽系の勢力範囲(太陽圏)が決定される。星間雲環境の直接観測はボイジャーなどの大規模計画でしか成しえないが、太陽圏内での観測でも星間雲起源の侵入物質を選別することによって星間雲の状態を推測することが可能となる。本研究では、太陽圏内での極端紫外分光観測から星間雲起源ヘリウムの散乱光成分を選別し、星間雲ヘリウムの物理パラメータを同定することが課題である。この光学観測の手法は、約40年前から行われている伝統的な方法であり、同じ観測手法で導出した星間雲パラメータを比較・議論することが可能なため、太陽圏と星間雲の現在・過去・未来を考察することが可能となる貴重な観測方法である。具体的な方法は、「ひさき」衛星による太陽圏内の極端紫外分光観測データと、星間雲起源中性ヘリウムの太陽圏内分布モデルから求められる極端紫外光分布を比較することで、星間雲の中性ヘリウムの物理パラメータを導出する。本年度は、2015年から2022年にわたる計8回の観測好機の極端紫外分光観測結果から、各年の星間風方向の最適解を導出した。過去40年間の他衛星観測と比較して、風向は誤差の範囲内で一致し、太陽風と星間雲のバランスには大きな変化はないという結論を得た。また、星間風パラメータを導出可能とする顕著な構造は見られなかったが、2020年から開始した1年を通した観測から、長期間にわたる観測は初めてとなる太陽圏の黄道面内全体にわたる中性ヘリウムの空間分布の星間風方向依存性を導出した。これらの結果は国内学会・国際学会にて研究成果として報告した。
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