研究課題/領域番号 |
18K03735
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 哲 北海道大学, 地球環境科学研究院, 博士研究員 (90514331)
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研究分担者 |
山崎 孝治 北海道大学, 地球環境科学研究院, 名誉教授 (70270791) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気候変動 / 北極温暖化 / 成層圏 / オゾンホール |
研究実績の概要 |
北半球の寒冷化傾向が観測される中で、気候モデルによるその再現ができていない。中緯度の寒冷化が地球温暖化の影響を受けた北極圏からの寒気流出の強まり によるものではないかと考えた。これまでの研究成果から北極の温暖化に伴う成層圏循環の変化が北極域から中緯度帯への寒気流出へ強く影響することがわかっ てきた。本研究は成層圏大気変動による対流圏循環への影響を組み入れて、北半球冬季の寒冷化傾向を説明するための、高い再現性をもつモデル構築を目的とする。そのためには成層圏における力学、化学放射過程の包括的理解が必要となる。 本年度は成層圏化学過程の導入のため、高速な成層圏化学過程モジュール(SWIFT)を、大気大循環モデル(AFES)に組み込む作業を行なった。アルフレッドウェゲナー研究所(ポツダム)のSWIFT開発者と密に連携をとりつつ、組み込み作業を完了させた。完成したAFES-SWIFTを用いた実験を行い、その結果を解析し、成層圏化学過程の放射を介したフィードバックにより力学場を変調する可能性が示された。現在はその結果を論文に取りまとめている。次年度前半には論文投稿そして公表される予定である。 また本研究課題期間中の2020年冬には、北極成層圏で強い極渦が生じ、北極としては史上最大のオゾンホールが発生した。この時の強い極渦は対流圏の循環と結合してユーラシア大陸全体に亘る暖冬をもたらしたと考えられている。このような極端イベントにおける成層圏オゾンのフィードバックを評価するためにAFES-SWIFTは最適なツールであり、研究の発展が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進んでいる。 30年度に当初計画を前倒しで、ドイツのアルフレッドウェゲナー研究所のDaniel Kreyling博士を日本へ招き開発作業を進めることができたことが幸いし、新型コロナウイルスの影響をほぼ受けることなく、開発を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)研究成果の取りまとめ(論文2本を予定)、および成果発表を行う。 2)研究の発展として2020年の事例解析にAFES-SWIFTを用いた実験を行うことで、近年の北極温暖化に伴う極端イベントおける成層圏科学放射過程のフィードバックの効果を推定する試みについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で旅費に使用する機会が減少したため、および英文校正費を節約できたため。 次年度使用額は翌年度請求分として計画通りに、旅費や成果発表に使用する予定である。 特に前者についてはコロナ禍で翌年度も支出の機会が減少する可能性があるが、最終年度であり、余剰が出た場合には返還する予定である。
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