研究課題/領域番号 |
18K03739
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩崎 博之 群馬大学, 教育学部, 教授 (70261823)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 落雷 / 多重雷 / 気候学 |
研究実績の概要 |
日本周辺と全球規模の二つの空間スケールについて,多重雷の多様性について実態把握を行った.日本周辺の解析から,気温が高い季節・領域ほど多重雷の雷撃時間間隔が長くなり,更に,落雷地点の標高が低くくても雷撃時間間隔が長くなることが分かった.これは,地表から雷雲内部の負電荷領域までの距離が長くなると,多重雷の雷撃時間間隔が長くなると言い換えることができ,この特徴は全球規模の解析からも確認できた.この距離が長くなるほど絶縁破壊電圧が高くなるため,第1雷撃で消費された負の電荷量が,次の第2雷撃が発生するために必要な電荷量にまで回復するまでの時間も長くなる.そのため,雷撃時間間隔が長くなると解釈することができる. また,多重雷が占める割合や長い雷撃時間間隔を持つ多重雷が占める割合は,明瞭な大陸-海洋コントタスとを持つことが分かった.更に,中緯度から熱帯域については,多重雷の割合や長い雷撃時間間隔を持つ多重雷の割合には,強い負の相関(r=-0.72)が認められた.これらの落雷気候学の成果を論文にまとめつつある. 積乱雲内部で霰(あられ)が形成されることが雷活動に不可欠であり,この霰の形成速度や3次元分布が雷の多様性に関連している可能性がある.その可能性を検討するために,国土交通省X-rain偏波レーダーのデータから,霰の3次元分布を算出するための基礎的なプログラムを作成し,多重雷の割合,雷撃時間間隔と積乱雲内部の霰分布の比較研究をする準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展している根拠は,次の3つである. 1. 雷の多様性については,同じ気候区内(日本周辺)と異なる気候区(全球規模)における多重雷の特徴について新しい知見を得られたこと. 2 雷の多様性のメカニズムの解明については,地表から雷雲内部の負電荷領域までの距離と多重雷の雷撃時間間隔との間に明瞭な直線関係があることを示したこと. 3. 国土交通省X-rain偏波レーダーのデータから,霰の3次元分布を算出するための基礎的なプログラムを作成できたこと.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,まず,多重雷の多様性についての研究成果を論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿する.また,全球規模で見た新たな落雷特性の多様性について解析を進める予定である. 次に,夏期の関東と九州の落雷を対象として,多重雷の割合,雷撃時間間隔などの雷特性と積乱雲内部の霰分布の比較研究に移行する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は以下の通り 1. 落雷気候学の研究を完成させるのに,時間が掛かり,論文作成が遅れて,英文校正・投稿料などを利用しなかった. 2. Xrainデータを解析する期間を決めかねているため,その解析用計算機を購入しなかったため. 今年度の始めには論文を投稿し,Xrainデータ解析に移れるため,夏頃には未使用分を使う予定である.
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