研究実績の概要 |
本研究で使用する解析データの入手と整理、計算機環境の構築を行った。 以前より成層圏突然昇温 (Sudden Stratospheric Warming; 以後SSW)時に海洋上で台風が多く発生することを報告しているが [Kodera et al., ACP, 2015他]、今回は、積雲パラメタリゼーションを用いていない全球非静力モデルの出力値を用いて、2010年1月のSSW 発生時にインド洋南西部で発生・発達した台風(サイクロン)の成層圏力学場が与える影響について解析を実施した。インド洋西部と太平洋西部で発生した台風の発生および発達の仕方の違いに成層圏力学場が与える影響ついて考察をし、本結果を国際会議で発表をした [Eguchi et al., SPARC GA 2018]。また客観解析データと衛星観測データを用いて、成層圏力学場が対流圏の特に北半球夏季のハドレー循環の長期変動に与える影響に関する学術論文を公開した [Kodera et al., ACP, 2019]。 他方、GOSAT(温室効果ガス観測技術衛星)の観測スペクトルデータを用いた氷雲の有無を判定する手法に関する学術論文を公開した [Eguchi and Yoshida, AMT, 2019]。本手法により、能動型衛星搭載ライダー(CALIOP)のデータとほぼ同質の氷雲の検出に成功し、CALIOPよりも高頻度(3日周期)で氷雲の有無のデータを提供できる。これにより約10年間 (2009年6月~現在) の氷雲の頻度データセットを本研究課題に活用できるようになった。特に対流圏界面近傍の氷雲は気温の変化に敏感であるため、成層圏の力学場 (上・下降流) の変動を理解する上で有用である。
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