研究課題
本年度は以下の解析を実施した。近年、北半球の冬の間の成層圏準2年周期振動 (Quasi Biennial Oscillation; QBO) による熱帯対流の変調に関する研究が注目を集めている。QBOは成層圏内の東西風が約28ヶ月周期で入れ替わる現象である。QBOが東風位相の場合、西風位相時と比べ、下部成層圏は上昇流が卓越し、低温となることが知られている。これまでの我々の研究成果から、対流圏上層が低温である場合、積雲対流活動が活発であることが知られている [例えば、Eguchi et al., 2015]。本研究では、過去約40年間の客観解析データ等を用いて、QBOが赤道インド洋から西太平洋への熱帯対流の季節進行影響を及ぼすことを明らかにしました。北半球冬季にQBOが東風位相の時期 (QBO-E)、海洋大陸と西太平洋上の大規模な対流がより強くなり、積雲対流活動が東に向かってより効果的に移動することを示しました。この関係は、QBO-Eのマッデンジュリアン振動(Madden-Julian Oscillation; MJO)の強化と一致しており、QBO-Eの熱帯対流圏界面層(TTL)の低温偏差が強化されているためと考えらる。本研究結果を学術論文に投稿のため準備中である。研究期間全体を通して、客観解析および衛星観測の長期的なデータ(20~40年間)を用いて、成層圏内の力学場の変化が熱帯域の積雲対流活動およびそれに伴う対流圏内の循環場に影響を与えていることを示した。特に成層圏突然昇温現象および準2年周期変動 (QBO) という成層圏内の南北循環の変化が顕著な現象に注目することで、効率的に成層圏の力学場が対流圏内の力学場に影響を与えていることを統計的に示すことができた。
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