研究課題/領域番号 |
18K03744
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川野 哲也 九州大学, 理学研究院, 助教 (30291511)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 梅雨前線帯低気圧 / メソスケール渦 / スケール間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,梅雨前線帯に内在する積乱雲スケールから梅雨前線帯スケールまでのスケール間相互作用の解明に迫ることである。初年度に当たる平成30年度は主に以下の2つのアプローチで研究を行った。 1)平成30年7月豪雨期間中に西日本地方に発現したメソスケール渦の振る舞いについて,気象庁メソ客観解析および長期再解析データを用いて調査した。降水の強化とメソスケール渦の発達とのよい対応が見られ,豪雨初期には1つであったメソスケール渦は,その後2つに分裂した。渦位インバージョン解析より,降水形成に伴う潜熱加熱がメソスケール渦の発達に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 2)梅雨前線帯低気圧が発達する平均的な環境場を用いた数値実験を行い,下層水蒸気変化に対する梅雨前線帯低気圧の応答について調査した。下層水蒸気をシステマティックに増減させると,梅雨前線帯低気圧の発達もそれに応じて変化した。低気圧の中心気圧でみた発達度合いの変化は,水蒸気量のある増分を境に大きく変化しているように見える。また,梅雨前線帯低気圧がもたらす降水についても大きな変化が確認された。降水分布に関しては,下層水蒸気が増加すると南東側に帯状の降水域が顕著に現れるようになった。さらに下層水蒸気の増分以上に降水量は増加した点は興味深い。これは,下層水蒸気を増加させると雨の素になる水蒸気が増す効果だけでなく,下層大気の不安定度が増す効果によるものと考えられる。これらのことは,環境場の下層水蒸気を変化させると梅雨前線帯低気圧の内部構造が変化することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体としては順調に進んでいる。しかしながら,若干の遅れもある。その主な理由は,高解像度数値シミュレーションの実行とその結果の解析に時間がかかっているためである。本年度はその点に注力して研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではデータ解析,数値シミュレーションともに時空間解像度が粗いため,積乱雲スケールの現象およびメソスケールの現象を解像することができていない。今後は,高解像度数値シミュレーションを実施し,積乱雲スケールから梅雨前線帯スケールまでのスケール間相互作用について解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画書には初年度に大容量ストレージ購入経費を計上していたが,今年度は研究室の現有ストレージを利用してデータ保存を行った。次年度以降に大容量ストレージを購入予定である。また,今年度に計上していた外国旅費に関しても,次年度以降に開催予定の国際学会出席旅費として使用予定である。
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