研究課題/領域番号 |
18K03748
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
直江 寛明 気象庁気象研究所, 気候・環境研究部, 室長 (70354511)
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研究分担者 |
眞木 貴史 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 室長 (50514973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オゾン全量 / Level 2の衛星観測オゾン / バイアス補正 / 地上観測オゾン / オゾンのトレンド解析 / オゾンの長期再解析 |
研究実績の概要 |
この研究では、利用可能な20種類のLevel 2 衛星観測オゾン全量 (TCO) データを40年間 (1978-2017) 分取得し、結合TCOデータセットを作成する。20種類の個々のTCOデータセットと結合したTCOデータは、ドブソンとブリューワー分光光度計による地上観測に対して補正を行う。ここでは2種類のバイアス補正法を用いる: 時間方向に線形単回帰を行う補正法と、時間、太陽天頂角、オゾンの有効温度を説明変数とした線形重回帰による補正法である。全ての衛星データセットで地上観測との差は2-3%の範囲にある。 TOMS/EP で校正が劣化した期間のデータや、NOAA提供の OMPS 観測初期のデータは品質が劣化している。一方、NASA提供のOMPSデータと地上観測との差は極めて安定している。GOME/MetOp-A and -B では、アルゴリズム更新時に地上観測との差に不連続があり、~8 DU に達している。 20種の衛星観測データを各グリッドで平均した結合TCOデータセットについて、重回帰を使った補正法によるTCOトレンドと補正なしとを比較すると一般的に低緯度で正の偏差となる。これは前者においてオゾンの有効温度が低い地域で、正の補正がなされるからである。重回帰補正法によるトレンドには明瞭な季節依存性と緯度依存性があるが、時間だけの単回帰補正法では季節依存性と緯度依存性はない。結合TCOデータセットの平均平方二乗差は、補正前の8.6 DU から、単回帰と重回帰いずれの補正において 8.4 DU へ減少している。 したがって、我々のバイアス補正法を用いた結合TCOデータセットは、時間方向に一様かつ高分解能であり、トレンド解析および長期再解析への同化データとして適している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で目標とした、利用可能な全ての Level 2 衛星観測オゾン全量の取得、地上観測データの取得、地上観測データから Level 2 オゾンデータの品質評価、衛星測器毎のバイアスやドリフトを取り除いた均質データセットは完了した。 2種類(時間の単回帰と、時間、太陽天頂角、オゾンの有効温度を用いた重回帰)のバイアス補正法により、20種類の個々のTCOデータセットと結合したTCOデータセットを作成した。結合TCOデータセットは、時間方向に一様かつ高分解能であり、トレンド解析および長期再解析への同化データに適している。バイアス補正したデータに関する解析も終了し、成果をまとめて当該年度に投稿し、受理・出版された。よって、本研究は計画以上に進行している。 さらに、得られた観測データと化学気候モデルによるデータ同化を行い、オゾン長期再解析は既に実施済みである。また、オゾン層・成層圏変動の長期変化を把握するために、赤道凖二年振動と極渦との因果関係の解析を行い、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、マルチセンサーの衛星観測オゾン全量 Level 2 データを地上観測との比較によりバイアス補正し、時間方向に一様かつ高分解能な結合データセットを作成し、地上観測データとの比較から結合データセットの品質評価を行った。さらに結合した観測データセットと最先端の化学気候モデルによるデータ同化を行い、オゾン長期再解析を実施した。 今後は得られたオゾン長期再解析データを用いて、独立な衛星観測のプロファイルデータや、各予報機関で作成しているオゾンの長期再解析データと比較することで品質評価を行う。得られた成果はまとめて論文化する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度にストレージ購入が当初予定していた額を超過していたため、前倒し支払いを請求(20万円)し、差額が生じた。その差額分が次年度使用分で、これは、論文の英文校閲、投稿料、国際学会発表に関わる旅費に使用する予定である。
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