研究課題
熱帯太平洋に発生するエルニーニョ・南方振動(ENSO)現象は、数か月先の異常気象予測の鍵となる現象であるが、事例別に見ると、最先端の気候モデルを持ってしてもENSOの発達・衰退の予測を大きく外すケースが少なからず存在し、その原因は事例・モデル・手法毎に異なる。本研究では、これまで難しいとされてきた複数の異なる季節予測システムを並行して実行するマルチモデル季節予測可能性研究を実施し、事例別に予測の鍵となる物理プロセスを明らかにすることを目的としている。本年度は、①:第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)の代表モデルの一つであるMIROC5をベースとした季節予測システム、②:第6期結合モデル相互比較計画(CMIP6)の代表モデルの一つであるMIROC6をベースとした季節予測システム、③:気象研究所の地球システムモデルをベースとした新しい予測システム、および④:③の熱帯海洋の解像度を上げた派生システムによる予測、の4者を比較したこれまでの結果を取りまとめた。これらの取り組みを通して、季節予測結果の事例別のマルチモデル比較の有用性が示された。今後に向けて、日本国内で準オペレーショナルな季節予測を行っている他の研究グループと、今後のマルチモデル比較の体制について検討を始めた。本課題は、複数の季節予測モデルによる数値実験から科学的知見を引き出すことを目指すものであり、ここから得られる知見は、飽和しつつある季節予測技術を次の段階に進めるためのマイルストーンにつながるものと期待される。
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