研究課題/領域番号 |
18K03753
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
堀井 孝憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究センター), 主任研究員 (20600430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 沿岸湧昇 / スマトラ・ジャワ島 / インド洋ダイポール現象 / 大気海洋相互作用 / 衛星海色データ / クロロフィルa / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界の海洋の沿岸湧昇域の中でほとんど観測データが得られていなかったスマトラ・ジャワ島南西部における冷水の沿岸湧昇、またそれに関連する大気海洋相互作用を調査し、インド洋規模の気候変動との因果関係を検証することである。第五年度(2022年度)は、この沿岸湧昇とインド洋の主要な気候変動モードであるインド洋ダイポール現象(IOD)との因果関係を示す先駆的な研究成果を国際誌に公表することができた。またこの成果に伴って見い出した新たな関連課題についても研究を進め、その成果を論文にまとめ国際誌に投稿した。以下に具体的な実績内容を示す。 昨年度までの本研究の結果から、ジャワ島やスマトラ島南西部における沿岸湧昇発生時の水温や塩分の鉛直構造およびそれらの時間変動が明らかになった。また、自ら整備し誤差評価を行った衛星観測の海色データを沿岸湧昇の指標として活用して、ジャワ島沖の沿岸湧昇の発生日を同定し、その後のIOD発達に関連する大規模な大気海洋相互作用との関係を明らかにしてきた。当年度は特に、IODに数ヵ月程度先行して系統的に発生していた沿岸湧昇のシグナルを見いだし、それに伴う大気海洋相互作用によって冷水のシグナルが外洋に向けて発達する過程を示すことができた。これらの成果を学術誌に発表し、また本研究の成果を一般向けの解説にまとめて海洋研究開発機構 (JAMSTEC) からのプレスリリースを行った。 さらに、本研究によって、ジャワ島沖の沿岸湧昇の発生日が長期的に早まっているという新しい課題を見いだした。この点についてインド洋の温暖化との関係を示唆した研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。 以上のように、2022年度は本研究の最重要ポイントである「沿岸湧昇とそれに関連する大気海洋相互作用およびインド洋規模の気候変動との関係」についての期待どおりの研究成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期間延長をした第五年度(2022年度)の研究計画は、本課題の総まとめとして、スマトラ・ジャワ島南沖の沿岸湧昇の発生とその後の大規模な大気海洋相互作用現象の発達との関係についての研究成果を学術誌に発表することと設定した。 第一に、当初の目的とした本研究の成果を国際誌に発表することができた。さらにこの成果を一般向けの解説にまとめて海洋研究開発機構 (JAMSTEC) からのプレスリリースとして公表することができた。 次に、本研究で得られた知見を応用して、ジャワ島南沖の沿岸湧昇の発生日の長期変化についての新たな研究課題にも取り組み、この研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。当年度(2022年度)中にこの成果を論文として発表する段階までは到達できなかったものの、論文の改訂がほぼ完了しており、期間再延長をする次年度(2023年度)に発表できる公算が大きい。この内容は当初の本課題の目的および計画から考えると期待以上の成果である。 以上のように、研究期間を延長したように計画と実施状況に変更はあったものの、本研究において提案した観測データに基づくスマトラ・ジャワ島南西海域の沿岸湧昇の研究は気候変動との因果関係を示す段階まで実を結び、当年度中に期待どおりの研究成果を論文として公表することができたことから、本研究活動はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
再延長した次年度(2023年度)は、これまでの本課題の成果によって見いだした新たな関連課題である「ジャワ島沖の沿岸湧昇の発生タイミングのインド洋の温暖化に伴う長期変化」という内容について、研究成果を学会や学術誌に発表する予定である。 また本研究を進める上で整備した衛星観測の海色データを基にしたジャワ島南沖の沿岸湧昇の指標の作成手法について、学会で発表し、またJAMSTECのウェブサイトなどに詳細を説明する予定である。 また、本課題で得られた知見を JAMSTEC のウェブサイトを通して一般向けの解説として発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)旅費について、当初現地参加を予定していた国際学会を昨年度までの状況に続き新型コロナウイルスの流行によりオンライン参加に変更したためである。物品費・その他について、論文の出版費を予定していたが、論文の発表が当初の予定より遅れて出版費を次年度の使用に変更したためである。 (使用計画)主に現在投稿中である論文の出版費に使用する。また一部を研究発表のため国内外の学会に出張する参加費および旅費として使用する。
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備考 |
2022年8月に「インド洋ダイポールモード現象を発生させる一因を解明 ~ジャワ島南岸で発生する冷水湧昇が引き金に~」というタイトルで本研究の成果をプレスリリースした。
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