研究課題/領域番号 |
18K03755
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 教博 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (80302248)
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研究分担者 |
後藤 和久 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (10376543)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地磁気年代 / 粘性残留磁気 / 津波性巨礫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、放射年代法と全く独立した地磁気による年代推定法を実用化することである。そのために以下の3つを解明する:1)基盤研究(B)の援助のもと提案した数理緩和モデルと新しい磁気加熱実験によって地磁気年代を求める手法を確立する、2)沈み込み帯に位置する巨礫試料(トンガ王国・大分県別府湾・東北地方沿岸)から80mm径のボーリングコアで変質を伴わない試料を採取するための機器を開発する、3)地磁気による年代を検証するために放射年代と比較する。本年度は、1)に関して新しい数理緩和モデルを利用した巨礫移動の地磁気年代を求める手法の一部を解明し、その成果を国際誌Earth and Planetary Science Letterに投稿し査読後に再投稿するも、10ヶ月以上も放置され困っている。また、巨礫の古地磁気年代に関するレビュー論文原稿も執筆し、現在査読中である。2)については巨礫表面の温度変化を最小限にするために、広いコア径の確保よりも深いコアの深度を確保することが必要であるため、155mm深のビッドを作成した。3)については、トンガ王国・大分別府湾に赴き、それぞれの地域に分布する巨礫について、155mm深のコアビットを用いて試料採集した。別府湾の試料については、巨礫周囲の地質調査の結果、巨礫が火砕流堆積物中に分布し、津波による移動よりも侵食により削り残されたことことが推定された。さらに古地磁気測定を実施することで、粘性残留磁気が着磁しておらず、さらに化学的に残留磁気が着磁したことが判明し、我々の古地磁気による年代推定が適用できないことが明らかになった。トンガではトンガタプ島より東側のトンガトレンチ沿いのエウア島での地質調査を実施し、沿岸部に10mを越す巨礫が分布することを発見した。今後、これらの巨礫の移動原因とその年代推定を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、機器開発と巨礫の地質調査および試料採取調査を実施できた。研究計画には記載していなかったが、千葉県房総半島での巨礫調査も実施している。レビュー論文原稿の英文校閲、実験室内での古地磁気分析結果や野外での調査データをその場で解析するためにノートパソコンを購入し、さらに取得データの学会での公表や研究打ち合わせ時有用なタブレット型コンピュータを導入し、研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、トンガ王国で採集した巨礫試料のウラントリウム年代の測定、古地磁気情報の取得、さらに新しい数理緩和モデルにおける未知変数(n)を温度可変式振動型磁力計により求めることを試みる。未知変数(n)を数値計算ソフトで求める時に、昨年購入したパソコンを利用する。また、結晶格子欠陥(転位や回位)と磁性鉱物の保磁力との関係について、液晶の数理科学から未知変数の実態を解明する予定である。また、断層破砕帯中で強く磁気を帯びたすべり面を超音波ダイアモンドカッターで切り出し、極地研究所の超電導量子干渉型岩石磁力計で熱消磁実験をおこない、地磁気を用いた年代推定法を適用することで、地震活動の年代を特定することも試み、断層破砕帯の活動年代を直接読み取る手法の確立を目指す。
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