研究課題/領域番号 |
18K03757
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 桂 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80402098)
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研究分担者 |
瀬戸 浩二 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60252897)
入月 俊明 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60262937)
坂井 三郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 技術研究員 (90359175)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 汽水湖 / 降水量 / 貝形虫 / 酸素同位体比 |
研究実績の概要 |
9月に中海湖心部において,2.5 m以上の長さの柱状試料を採取した.これらは土色測定,記載を行った後,軟X線写真用,帯磁率用試料を採取後,1 cmの厚さに分割し,それぞれ貝形虫用,粒度分析,有機物測定用試料に分けた.各試料の用途に合わせて,凍結乾燥などの処理を行っている. 中海の表層試料採取及び水質データ測定は,2018年6月15日から7月25日に行った.これらの期間に数日に一度の割合で,計15日間調査を行った.水洗した底質泥から軟体部の付着した成体の貝形虫Bicornucythere bisanensis殻を各試料8個取り出し,片殻を炭素・酸素同位体比の分析用試料とした.分析は1殻ずつ行った.底層水温及び塩分は国交省が湖心部で定期観測し公開しているデータを用いた. 結果として,計105 殻から炭素・酸素同位体比が得られた.酸素同位体比の値の多くは-1.0~0.5‰であったが,5 試料からこれらより低い酸素同位体比が得られた.また,調査期間の後半はこれらより高い酸素同位体比が多く見られた.同じ底質試料内の各貝形虫殻の酸素同位体比のばらつきは0.4~2.5‰であった.一般に中海の夏季の日平均底層塩分は32 程度で推移し,一定以上の降水があった後は数日間,25 程度まで低下する.調査日とその前後を含む6/1~7/25 までの松江市の日降水量及び湖心部底層の塩分と殻の酸素同位体比を比較すると,最も多くの値が集中した-1.0~0.5‰の酸素同位体比 を示した個体は定常時に殻を形成した個体であり,より低い値の5 個体は降水による塩分低下時に殻を形成した個体と考えられる.これらの低い値を用いて塩分と殻の酸素同位体比との関係を検討している.また,柱状試料中の貝形虫殻についても,一部炭素・酸素同位体比分析を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の予定のうち,柱状試料採取,表層堆積物の採取及び貝形虫殻の酸素同位体比の分析は全て終了している.一方,表層堆積物採取の調査に予想以上の予算が必要になり,2018年度に予定していた柱状試料の14C年代測定が予算の不足によりできなかった.これについては2019年度の予算を一部用いて行う予定である.しかし,当初の計画では2019年度に予定していた柱状試料中の貝形虫殻の酸素同位体比測定について,約200試料の分析準備が整い,50試料については分析が終了している.これらから総合して,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,柱状試料を用いた分析に着手し,堆積物のCNS分析,粒度分析を行うほか,貝形虫殻の酸素同位体比分析を可能な限り進める.なお,当初の予定通り殻の酸素同位体比分析を行う試料数が多く,時間がかかることがわかった.加えて,機械の調子により分析ができない時期が存在するため,早めに試料を準備し分析可能な時期に集中して行うようにする.2018年度に予算の都合で行えなかった14C年代測定は,2019年度に試料数を減らして行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は中海での現地調査旅費及び同調査に必要な物品購入に予定以上の予算が必要になり,14C年代測定を行う費用を十分確保できなかった.そのため,2018年度に使用予定であった14C年代用の残りの予算と2019年度の予算の一部を合わせて,2019年度に14C年代測定を行うため,次年度使用額が生じた.
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