研究課題/領域番号 |
18K03760
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
辻本 彰 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (60570554)
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研究分担者 |
松本 一郎 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (30335541)
渡邉 正巳 島根大学, エスチュアリー研究センター, 客員研究員 (80626276)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 磁鉄鉱 / たたら製鉄 / 切羽 / 鉄穴流し / 元素分析 |
研究実績の概要 |
今年度は,砂鉄の起源推定のための基礎的データを得るために,母岩中(山砂鉄)の磁鉄鉱の化学組成の分析を行った.母岩中の磁鉄鉱の化学組成を分析するにあたり,島根県雲南市吉田町の菅谷たたらで使用されていた鉄穴場跡周辺において,野外調査と試料採取を行った.菅谷たたらでは,使用されていた鉄穴場の記録が残されており,歴史記録との対比を行うことができるといった利点がある. 採取した試料は,花こう閃緑岩~石英閃緑岩,黒雲母花こう岩,川砂鉄であり,分離した磁鉄鉱についてエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で化学分析を行った.Al2O3,SiO2,TiO2を用いて三角ダイヤグラムを作成したところ,黒雲母花こう岩地帯である新在池はTiO2の含有量が低くAl2O3,SiO2の含有量にばらつきが少なかった.花こう閃緑岩~石英閃緑岩地帯である茅野は,SiO2の割合が高くばらつきが少なかった.粟谷は川砂鉄であり,その他の地点とは値が異なった. 花こう閃緑岩~石英閃緑岩は主に赤目砂鉄(Tiが比較的高い砂鉄)の原料とされており,茅野・内家の砂鉄の形状は赤目砂鉄に似るが,Tiが平均で2%を下回り,赤目砂鉄の化学的な特徴を示さなかった. 川砂鉄はTiが高く,たたら製鉄の工程の籠り期で用いられる籠り砂鉄として使われていた.粟谷の川砂鉄はTiO2が多く,籠り砂鉄として使われていた可能性がある. 同じ黒雲母花こう岩でも,地点によって化学組成にばらつきが認められた.しかし,化学組成のばらつきが少なく磁鉄鉱特有の光沢が見られ,粒形も規則的なものが多い地点もあり,地点によって真砂砂鉄の”純度”が異なっていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,たたら製鉄に関して考古学的な知見を有している研究協力者らとの意見交換会を開催し,歴史・考古学的な観点からの資料と情報の共有ができた.その結果,山砂鉄の化学的特徴と,たたら製鉄の歴史に関する議論を深めることができた.また,製鉄遺跡から採取された砂鉄についても試料の提供を受けることができた.河川堆積物の化学的特徴については,データをまとめて地質学会にて発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
山砂鉄の特徴を明らかにするために,2019年度に引き続き,試料の採取と分析を行う.山砂鉄・川砂鉄の磁鉄鉱の形態分析・化学分析の結果についてまとめ,たたら製鉄遺跡における使用砂鉄の産地推定磁鉄鉱データベースを作成する.また,研究協力者から提供を受けた,たたら製鉄遺跡から採取された磁鉄鉱についても同様の形態分析・化学分析を行い,その特徴を明らかにする.遺跡試料とデータベースを比較することで,産地推定法の妥当性の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
エネルギー分散型X線分析(EDS)において装置の不具合が生じたため,計画通りに分析を進めることができなかった.次年度使用額は,SEM-EDS分析に関わる消耗品や謝金として使用予定である.
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