研究課題/領域番号 |
18K03767
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
七山 太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (20357685)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超巨大地震(17世紀型) / 海溝型地震 / 津波堆積物 / 千島海溝 / バリアー砂堆 / 余効変動 / キナシベツ湿原 |
研究実績の概要 |
千島海溝沿岸域は本邦屈指の地震多発地帯である.この地には17世紀や12/13世紀に発生したとされる津波堆積物が多くの地域で観察出来る.一方,根室海峡や根釧から十勝海岸には我が国には珍しい現在も活動的なバリアー砂堆が多数認められ,17世紀の地震に起因して隆起し,その後現在まで沈降し続けていることが明らかとなっている.この問題の解決の糸口として,初年度の別当賀湿原とホロカヤントー測線に加え次年度ではその中間の釧路市西縁のキナシベツ湿原において調査測線を追加した.キナシベツ湿原で行った調査によって,17世紀地震によって離水したバリアー砂堆を特定することができた.現在の海岸に認められる浜堤との比高差をBH値を用いて比較した結果,その隆起量は1.7 m以上と推定された.この値は十勝海岸ホロカヤントー測線で得られた1.4 m以上の隆起量と同等もしくは少し上回る.さらに17世紀に隆起した浜堤の陸側には17世紀津波堆積物に覆われた古い湖沼堆積物の存在を確認出来た.以上の事実関係から,以下のような過程が推測される.(1)17世紀超巨大地震発生後に大津波が襲来し,古いバリアー砂堆を侵食した.その砂が津波堆積物の母材となり,湖底や周囲の湿原に再堆積した.(2)その後,沿岸漂砂によりバリアー砂堆が復元された.(3)余効変動によって徐々にバリアー砂堆が隆起し,遅くともUs-bテフラが降灰した1663年には波の影響が達しない高度まで到達していた.(4)また,この余効変動によって白糠丘陵地域以西が,根釧海岸よりも大きく隆起していたことは明確である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた霧多布湿原での調査は,計画通りには実施出来なかった.しかし代案として実施した根室市別当賀湿原,大樹町ホロカヤントー,釧路市キナシベツ湿原の3測線において,当初の目標であった17世紀超巨大地震による離水したバリアー砂堆と津波堆積物との前後関係と空間関係を明確にし,余効変動による浜堤の隆起を明確にすることが出来た.さらに,この地震によって,白糠丘陵以西が大きく隆起していることが明確となった.
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今後の研究の推進方策 |
別当賀湿原,ホロカヤントー,キナシベツ湿原において更なる検討を加え,その他のバリアー海岸においても同様の手法で検討を行っていく予定である.但し現在(5月11日時点),新型コロナウイルス感染症のため今年度の現地調査が困難な情況にあり,研究期間の延期も念頭に置いて作業を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年は,北海道での夏場の天候不順が長引き,キナシベツ湿原の調査のみで,その他の地域での現地調査を実施することが出来なかった.また,当初はAGU等の国際学会での成果発表を計画していたが,新型コロナウイルス感染症の拡大が危惧されたため,急遽参加を辞退した.本年は繰り越した394,230円を有効に利用し,主に国内外での成果発表を行う予定である.
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