研究課題/領域番号 |
18K03767
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
七山 太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (20357685)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超巨大地震(17世紀型) / 海溝型地震 / 津波堆積物 / 千島海溝 / バリアー砂堆 / 余効変動 / パシュクル沼湿原 / 白糠丘陵 |
研究実績の概要 |
今年度はコロナ禍のため,北海道東部での現地調査は出来なかった.そこで,この機会に,2011年夏に実施され,その後,論文化が遅滞していた白糠丘陵南縁の馬主来沼沼湿原に埋没していた完新世Crassostrea gigas化石層のタフォノミーと産状の再検討を,この科研費研究で得られている現世の地殻変動情報と比較して行った.その結果を,以下に箇条書きに示す. (1)湖岸露頭と5つのトレンチの壁面で作成した層相柱状図を対比して,6つの層序ユニット(SU-X, SU-A, SU-B, SU-C, SU-D, SU-E)を識別した.このうち,SU-Bを構成する厚いC. gigas化石層は複合化石層を構成し,その内部に他生と自生および準自生の産状ユニットが繰り返す7つの化石層ユニット(FB-aからFB-g)が認識できた. (2)馬主来沼地域にカキ礁が形成され始めたのは約7400年前のことであり,その後,5600年前までの約1800年間でC. gigas化石密集層が形成されたことになる.その間に5 回,M. arenaria oonogaiやカキ礁を洗掘,運搬・再堆積させる高潮等の大規模波動イベントが発生した可能性が指摘される.これは約300–500 年毎に発生するとされる道東の超巨大地震の発生間隔とほぼ近似でき,巨大津波の遡上流による影響も想定可能である. (3)馬主来沼地域においては,5600年前に完新世高海面期が存在し,その高度は2.1 mから2.8 mの間に会った.その後現在までに,約2 mから3 mも海面が低下しているが,これは白糠丘陵一帯の地震性地殻変動の影響と考えられる.このような白糠丘陵の第四紀における急激な隆起現象は,千島前弧スリバーの西進衝突によるネオテクトニクスの影響と論じられている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症のため,現地調査が実施できず順延となった.また,国内外の学会もバーチャル開催のみであり,参加を見送ることにした.その代わり,既存のデータを取りまとめ,論文化する作業を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
たいへん残念なことに,この報告書の執筆時点(2021年5月3日)においても新型コロナウイルス感染症は収束の目処が見えず,十分な現地調査が実施でき無い可能性が高い.また,国内外の学会のバーチャル開催の参加についても見送る予定である.その代わり,既に得られている現地データを取りまとめ,論文化する作業を集中的に進めたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため,現地調査が実施できず順延となった.また,国内外の学会もバーチャル開催のみであり,参加を見送ることにした.このため,研究期間を1年間延期し,729,832円を繰り越して使用することにした. たいへん残念なことに,この報告書の執筆時点(2021年5月3日)においても新型コロナウイルス感染症は収束の目処が見えず,今年度も十分な現地調査が実施でき無い可能性が高い.また,国内外の学会のバーチャル開催の参加についても見送る予定である.その代わり,既に得られている現地データを取りまとめ,論文化する作業を集中的に進めたいと考えている.
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