研究課題
今年度もコロナ禍のため,当初計画どおりの北海道東部沿岸地域での現地地形調査の実施は困難であった.そこで,過去3年間に得られた資料やコア試料を用いて,研究結果の取りまとめと論文取りまとめを行った.(1)馬主来沼湿原カキ礁トレンチの調査結果:2011年に馬主来沼東岸において5孔のトレンチ掘削を行ない,堆積学的・古生物学的手法ならびにAMS14C年代測定結果を用いて,完新世Crassostrea gigas化石層のタフォノミーを解明を目指した.その成果として,当地のカキ礁が形成されたのは,約7400年前から5600年前にかけてであり,その間に少なくとも5回の大規模波動イベントを被ったことが判明した.(2)釧路市春採湖の津波堆積物の調査結果:北海道太平洋岸の海跡湖・春採湖を中心とした津波堆積物研究により,M9クラスの超巨大地震津波は完新世を通じて数500年周期で起きていたことが明らかになっている.一方で,地震発生による湖沼内の水環境変化については十分研究が進んでおらず,地震が基礎生態系に与える影響については明らかにされていない.そこで,津波堆積物を含む湖底堆積物の珪藻遺骸の検討を実施した.現在もこの検討は継続して実施している.(3)17世紀地震によって離水したバリアー砂堆の調査結果:道東沿岸地域には我が国には珍しい現在も活動的なバリアー砂堆が多数認められる.それらは17世紀の地震よって隆起し,その後現在まで沈降し続けていることが明らかとなっている.この問題の解決の糸口として,別当賀湿原,十勝海岸のホロカヤントー,キナシベツ湿原において,17世紀地震によって離水したバリアー砂堆を特定することを試みた.その結果,隆起量は地域によって大きく異なり0.4から1.7 m以上であること,特に白糠丘陵地域が隆起していること,等が判明した.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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