研究課題/領域番号 |
18K03769
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研究機関 | 山梨県富士山科学研究所 |
研究代表者 |
山本 真也 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (50526754)
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研究分担者 |
大河内 直彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門, 部門長 (00281832)
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
吉本 充宏 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (20334287)
宮入 陽介 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (30451800)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射性炭素同位体 / 湖底堆積物 / 山中湖 / 脂肪酸 / 噴火史 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、山中湖の湖底堆積物に含まれる有機物種間における放射性炭素(14C)年代の違いやその要因を明らかにするため、2018年に山中湖湖心で採取した表層堆積物に含まれる脂肪酸及び色素化合物(及びその分解産物)の化合物レベル14C年代測定を行い、全有機炭素(total organic carbon; TOC)、植物片等との比較を行なった。その結果、表層堆積物中の有機化合物の放射性炭素同位体比(Δ14C)は、C16、C24、C28脂肪酸やクロロフィルaで湖水中の溶存無機炭素(DIC)に比べ低く(-95‰から-122‰)、水草に近い値を示した。また、C26脂肪酸やクロロフィルaの分解産物(フェオフィチンa、パイロフェオフィチンa)のΔ14Cは、水草に比べ低くなっており(-139‰から-195‰)、土壌等からの古い有機物の影響が示唆された。一方、TOCのΔ14C(-73 ± 2‰)は、秋の湖水中のDIC(-66 ± 8‰)と整合的な値を示した。このことは、山中湖の湖底堆積物の年代測定には、TOCが適しており、リザーバー年代(大気-湖水間の14Cの年代差)の補正により堆積物の年代推定が可能であることを示唆している。また、山中湖の堆積物コア(YA-1)の年代モデルを作成するため、TOCの14C年代測定を14層準で行なった。更に、山中湖の堆積物コアに含まれる降下スコリア層を湖周辺の陸上露頭と対比させるため、山中湖南岸でトレンチ調査を行い、1707年の宝永噴火スコリア層、約3200年前の砂沢スコリア層を含む14層の降下スコリア層を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施した河口湖とは異なり、植物プランクトン由来の脂肪酸の年代が湖水のDICの年代に比べて古かったため、山中湖では脂肪酸を利用した年代推定が困難であることが判明した。一方、全有機炭素の放射性年代が湖水のDICとよく一致していたことから、当初予定していた堆積物コアの年代測定自体には問題がなく、当初の目的は達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度測定した14C年代を基に山中湖の堆積物コアの年代モデルを作成し、過去8,000年間に山中湖に堆積した降下スコリア層の年代を明らかにする。更に、山中湖湖岸のトレンチ断面で得られた降下スコリア層との対比を進め、富士山北東麓における降下スコリア層の分布・給源を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、研究成果の公表のため国際学会への海外旅費を見込んでいたが、新型コロナ感染症の影響で、参加を予定していた学会が延期・中止となったため余剰が生じた。この余剰金については、次年度実施する分析の消耗品に充当する予定である。
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