研究課題/領域番号 |
18K03770
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
常松 佳恵 山形大学, 理学部, 准教授 (90722207)
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研究分担者 |
山田 大志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 特別研究員 (60804896)
横尾 亮彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70420403)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 火山岩塊 / 火山灰 / 数値モデル / 抵抗係数 / ランダム速度 |
研究実績の概要 |
本研究は現在、スケールの違いなどから別々のモデルとして扱われている火山岩塊と火山灰輸送を表すそれぞれの数値モデルを組合せた包括的な火砕物の輸送に関する数値モデルを開発することを目的としている。初年度は、まず、スケールの違いが火砕物の輸送にどのような違いをもたらすかを知るため、1)火砕物の抵抗係数を測る実験を行った。また、2)実際に観測を行って火砕物の輸送を捉えようとした。 1)については、実際に蔵王火山で採取された1895年の火山岩塊を用いて、風洞実験を行った。火山灰(< 2 ㎜)や火山礫(< 64 mm)などの比較的小さな火砕物については実際に風洞実験による抵抗係数を求めた報告が多数あるが、研究代表者の知るところでは 64 mm よりも大きい火山岩塊の抵抗係数を風洞実験によって求めた例は1つだけである。よって、このような実験によって天然の火山岩塊の抵抗係数が求められれば、火砕物の運搬をシミュレーションするさいに大きさの違いによって抵抗係数をどのように設定していけば良いかが求められる。現在は、このような抵抗係数の測定を大きさや形状の違う岩塊についておこなっている最中である。 2)実際の噴火の観測は、火山岩塊が大気や噴煙による拡散の影響をどのように受けるかを表すランダム速度を求めるために重要である。そのため、諏訪之瀬島での観測を試みたが、諏訪之瀬島の立入規制区域には、桜島火山観測所によって監視されて、それを携帯電話で知らせてもらえる状態でなければ許されない。代表者と分担者で9月に諏訪之瀬島に行ったが、その際に諏訪之瀬島の携帯電話ネットワークが到着する直前に雷で途切れてしまい、滞在中には規制区域内に立ち入っての観測ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
諏訪之瀬島で実際に噴火を観測することによって2つの数値モデルをつなぐ重要な手掛かりとなるランダム速度の情報を得ようと思っていたが、諏訪之瀬島での観測が携帯電話ネットワークの断絶のためにできなくなってしまい、解析できるデータが取得できなかった。そのため、方針を変更して観測だけに頼らずに、風洞実験等で抵抗係数を測る手法を取るようにしたが、風洞実験で天然の岩石を用いた例は今までに数少なく試行錯誤があったために明らかな成果はまだ出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
実際の噴火を解析するには、噴火している火山の近くに行かなければならず、諏訪之瀬島はアクセスも1週間に2回のみ航行するフェリーしか使えないため、タイミングを合わせるのが非常に難しい。そのため、風洞実験による抵抗係数や岩塊周辺の速度場の計測、爆発実験による火山岩塊と見立てたボールの軌道およびその周辺のガスの速度場の計測などを行って代替データを取得したい。また、流体力学の専門家等の意見を取り入れて新しいガスの流れの解析手法を取り入れ、今までの火山学では出てこなかった議論展開を行いたい。現在、阿蘇山が活動度が上がってきているため、このような別の火山が噴火する場合には諏訪之瀬島に限らずその噴火を観測し、数値モデル改良のためのデータを取得していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
観測用の赤外線カメラの購入を考えていたが、使用してみないと不安であるため、購入を考えていた機種と同じものを桜島火山観測所が所持していたので、それを借用した。今後は赤外線カメラ、もしくはハイスピードカメラを購入して観測を行うか、レンタルして観測を行うことを考えたい。
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