研究課題
本学術研究助成基金の研究は,本邦周辺の第四系を対象とする複合年代尺度を設定し,かつ北西太平洋海域の代表的第四系セクションを構築するために,房総半島の第四系の年代層序学的検討を行ってきたものである.令和2年度も,前年度に引き続き房総半島に分布する上総層群のうち,黄和田層と大田代層の一部を研究対象として,調査,試料採取を行って石灰質ナノ化石,浮遊性有孔虫化石,および酸素同位体比の測定を行った.その結果,大田代層と黄和田層の大半について,従来の結果をはるかに上回る詳しいデータを収集することができ,高い時間分解能での年代設定が行えるようになった.それに加えて,詳細な古環境変遷の議論も可能になった.これらの成果のうち,平成30年度に収集した黄和田層の上部については,令和元年度に作成した論文が受理され,出版されることになっている.また,それ以外の層準,梅ヶ瀬層についてのデータを総合した論文と,黄和田層の浮遊性有孔虫化石と古海洋に関する論文を執筆中である.さらにこれまでの成果により,本邦周辺における約90万年前頃および100-110万年前頃の詳細な年代尺度を確立することができたので,石灰質ナノ化石の基準面である大型のGephyrocapsaの上限,Helicosphaera selliiの上限,Gephyrocapsa parallelaの産出下限,そしてReticulofenestra asanoiの産出上限などの基準面の評価を行った論文も作成予定である.併せて,詳細な化石群集の検討により,約90万年前頃および100-110万年前頃の表層海洋環境の議論も行うことができるので,北西太平洋海域の更新世海洋環境についての理解がいっそう進むことが期待できる結果となった.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Episodes
巻: - ページ: -
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 7 ページ: -
10.1186/s40645-020-00355-x