研究課題/領域番号 |
18K03773
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中井 俊一 東京大学, 地震研究所, 教授 (50188869)
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研究分担者 |
三好 雅也 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (50557353)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホウ素 / 同位体希釈分析 / ICPMS / 火山岩 |
研究実績の概要 |
2018年度はホウ素の分析法を確立した.まずクリーンルームの空気導入フィルターを低ホウ素の素材に切り替え,試料を蒸発乾固させるボックスのフィルターも低ホウ素用の物に交換した.同位体希釈分析に用いるICP質量分析装置のバックグランドも高い問題があったが,ICP質量分析計のコリジョンセルにヘリウムガスを流すことにより,ホウ素11のバックグランドを2,000cps以下まで下げることに成功した.以上の改良で同位体希釈分析の準備が整った. 同位体希釈分析にはSpex社のホウ素10が濃縮した物質を使った.テフロンビーカー中に岩石試料とホウ素スパイクを混ぜ,フッ化水素酸,塩酸,マンニトール溶液を混合し,蓋をしたまま70度で2日程度加熱し,同位体平衡に達せさせる.密閉系の乾固システムで60度で試料を乾固した後,ICP質量分析計の測定用の2%硝酸で残差を溶解し,溶解した部分のみを用いて測定を行った. ホウ素の信頼できる定量値が報告されている標準岩石試料を用いて,分析の正確さ,精度や,どの程度の低濃度の試料が分析可能かについて検討した.これまで報告されている表面電離型質量分析計を用いた同位体希釈分析の結果と比較検討した.その結果,JB2など比較的ホウ素濃度の高い(20ppm程度)試料から,ホウ素濃度が1ppm以下のBIR2にいたるまで,とよく一致する定量結果が得られた.また研究分担者により,これまでに即発ガンマ線分析で行われた定量結果と比較したところ,多くの試料で良い一致が見られたが,20%程度の差を示す試料も見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室の整備,測定装置の条件設定などで時間がかかったところもあったが,研究初年度でホウ素分析の方法を確立できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は即発ガンマ線分析の分析値がある九州の諸火山の試料の分析を行い,異なる分析法の間での正確さの比較などに着手する. 既に同位体比,微量元素データを得ている試料のホウ素分析を行い,マグマ成因の議論にさらなる制約をつけることをめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の三好は2018年8月までに岩石薄片作成用の火山岩試料を準備する予定であったが,悪天候が重なり当初計画通りにフィールドワーク等を行うことができなかった. その影響で岩石試料準備に遅延が生じ,年度内に岩石薄片の作成を行うことができなかったため,次年度に使用することとした.
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