本研究の最終年度にあたる2020年度はホウ素の分析法の更なる検討を行い,確立した分析方法をGeochemical Journal誌に論文発表した.発表した論文はオープンアクセス公開した. 分析法については前年度までの方法をほぼ踏襲しているが,ICP質量分析計での同位体希釈分析測定の際の,試料間のネブライザー洗浄を変更するなど微修正を行っている. これまでに,ICP発光分析,ICP質量分析,表面電離型質量分析計を用いた同位体希釈分析,即発ガンマ線分析などでホウ素の定量値が報告されている標準岩石試料を用いて,分析の正確さ,精度や,どの程度の低濃度の試料が分析可能かについて検討した. その結果,JB2など比較的ホウ素濃度の高い(20ppm程度)試料から,ホウ素濃度が数ppm程度の試料にいたるまで,これまでの報告値とよく一致する定量結果が得られた.ホウ素濃度が1ppmを切るような非島弧試料に関しては,測定の際のバックグランド変化の影響で,測定結果に問題が残っている.今後も分析を改良してゆく必要が残った.この比較の結果は発表論文に解説されている. 開発した方法を島弧火山岩試料へ適用しホウ素濃度の定量分析を行っている.研究分担者のグループと共同で九州の火山岩試料のホウ素濃度を系統的に分析し,ウラン―トリウム放射非平衡分析の結果などの他の地球化学的指標と比較し,マグマ発生について議論する研究を開始している.また,チリ沈み込み帯の火山への適用の関しては弘前大学のグループと共同研究を行っている.
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