研究課題/領域番号 |
18K03777
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神田 径 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00301755)
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研究分担者 |
高倉 伸一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (50357349)
丹保 俊哉 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 主任学芸員 (10574311)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 比抵抗 / 浸透率 / 流動カラム実験 / キャップ構造 / 水蒸気噴火 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、流動カラム装置を用いた様々な媒質に対する熱水の浸透実験を行い、酸性環境下における透水係数と比抵抗の同時測定から、キャップロックとして機能する低透水性の岩石・鉱物を探索し、低比抵抗を示すかどうかを検証する。平成30年度は、年次計画に従って、透水係数および比抵抗の同時測定のための流動実験カラム装置を製作した。分担者の高倉の所属機関に現有するカラム装置のプロトタイプを参考に、内径10cm、高さ50cmのアクリルパイプを2本重ねた長さ100cmのカラム装置を製作した。10cm毎に穴をあけてセンサーを挿入できるようにし、底にはバルブで開閉できる排水機構を取り付けた。比抵抗の計測には当初予定していた信号発生器とデジタルマルチメータの組み合わせではなく、送受信信号を一体的に測定できるHIOKI社製のLCRメータを用いた。排水した流体量の測定には、島津製作所製の電子天秤を導入した。温度計測には、K熱電対センサー4本を用いた同時測定が可能なデジタル温度計を使用している。これらの計測装置を組み上げて、固相としてガラスビーズを、液相として水道水を用いた流動実験を行い、装置と測定系の調整を試みた。
また、次年度予定している土砂採取の候補地点を探索するため、土壌ガス拡散放出量観測および地中温度測定を立山地獄谷内の合計113ヶ所で実施した。地獄谷では何ヶ所かで群をなして温泉・噴気活動が見られるが、10,000(g/m2/day)を超えるような二酸化炭素放出量の大きな場所は、それらの噴気地帯周辺に一致していた。この値は、他火山における測定結果と比べても桁違いに大きく、水蒸気噴火火口跡が連結して地獄谷が形成されたことに起因しているものと思われる。比抵抗構造調査の先行研究では、表層付近の低比抵抗帯を浸透率の悪い層であると解釈しているが、この解釈を改める必要があるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた流動実験のためのカラム装置の試作を行い、透水係数と電気比抵抗を同時に測定するための測定系の構築も行えた。また、立山地獄谷での土壌ガス拡散放出量調査を実施することができた。カラム装置は、当初心配していた水圧による装置のたわみが見られず、水漏れがほとんど起きなかったことは大きな成果である。また、立山地獄谷の調査では、想定外に高い土壌ガスの拡散放出量があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
年次計画に従って、カラム装置を用いた流動実験を進めるほか、立山地獄谷で実施した土壌ガス拡散放出量測定の結果を踏まえ、何カ所かで土砂採取を行い、構成物質の同定を行う予定である。また、新規に導入する現場での透水係数測定装置を使用した調査も予定している。
カラム装置は、内径を10cmとしたことにより、水漏れを防ぐため、現状では重量のある大きなサイズの排水機構を使用している。このため、装置全体に負荷がかかっているほか、バルブの開閉がスムーズに行えず、排水量の測定のための空間を確保しにくい、などの難点がある。次年度はこの点の改良を進め、いくつかの媒質を用いた実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は主に二点ある。まず、カラム装置の製作は、アクリル材料を専門に扱う業者に発注することを想定していたが、分担者の機関内の技術担当部署で製作することができたため、製作費を抑えることができた。また、電気比抵抗の測定には、信号発生器により発生した信号をデジタルマルチメータで受信し、比抵抗値を見積もることを想定していたが、別経費で購入したLCRメータを使えることが判明したため、その支出がなくなった。次年度は、カラム装置の改良費用や実験用消耗品に使用するほか、フィールドでの透水係数を測定するための土壌透水係数測定器の購入費用、試料採取や測定のための旅費、試料の分析費用などに使用を予定している。さらに、実験の進展具合によっては、透水係数から浸透率を求めるため、粘度計の購入も検討する。
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