研究課題/領域番号 |
18K03779
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平原 和朗 香川大学, 四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構, 客員教授 (40165197)
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研究分担者 |
宮崎 真一 京都大学, 理学研究科, 教授 (00334285)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 長期的スロースリップ / 速度状態依存摩擦則 / 自発的セグメンテーション / 一様な摩擦特性 / 横長なスロースリップ域 / 震源核臨界サイズ |
研究実績の概要 |
地表で観測されたGNSSデータから、データ同化手法の一手法であるアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)を用いて、豊後水道長期的スロースリップ(L-SSE)発生域での摩擦パラメータ推定およびすべり発展予測を行う研究を行っている。その際、実GNSSデータを説明するにはある程度実データを再現する初期摩擦モデルの構築が重要であることが分かったため、まず一つのL-SSE域を仮定した初期モデルの構築法を探索していた。
ところが最近、四国中部~豊後水道~日向灘領域でL-SSEがセグメント状に発生し、更にL-SSEの伝播現象およびL-SSE間の相互作用が発見されている。そこで、3次元プレート形状を考慮したモデルで複数のL-SSEパッチを仮定して、初期モデル構築を行ったところ、かなり複雑な挙動を示すことが分かったので、まず単純な平面モデルから検討を始めた。
単純化のため、平面モデルで摩擦特性の一様な走向方向に長い横長のL-SSE域を考えた。その中で、パッチを設定していないのにもかかわらずSSE域のセグメンテーション(分裂)が自発的に発生する現象を発見した。これまで一様摩擦特性モデルでSSE域の分裂発生条件を調べた研究はなかった。そこで、分裂条件を調べることにした。まず、SSE発生には、SSE幅Wよりやや大きな震源核臨界サイズが必要である。震源核臨界サイズには多くの種類があるが、その中で、Ruina(1983)およびRice(1993)による不安定滑りを発生させる条件である震源核臨界サイズh*rrが、SEE域の走向方向長さをコントールしていることが分かった。今後はパッチを置く場合だけなく、本研究で発見した一様摩擦特性を持つL-SSE発生域でのSSE分裂発生を組み合わせた、初期モデル構築法を考えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は一つのパッチを設定して豊後水道長期的スロースリップ(L-SSE)を発生させることを考えていた。その延長上で、実際の観測では多くのL-SSEがパッチ上に発しているため、3次元形状を持つプレート境界面上に、複数のパッチを分布させL-SSEを発生させることを考えていた。 問題を簡単にするため、平面断層を考え、摩擦特性の一様な走向方向に横長のL-SSEを考えたとところ、全くパッチを設定していないのにも関わらず、複数のL-SSEが自発的に分裂発生し、セグメンテーション化する場合があることを発見した。その分裂発生条件を検討したところ、Ruina(1983)およびRice(1993)による不安定滑りを発生させる条件である震源核臨界サイズが、SSEの走向方向の長さを規定する重要なパラメータであることが分かった。
これは従来の研究では検討されてこなかった全く新たな視点からの、L-SSE域のセグメンテーション作成法の発見であり、意外とも言える重要な発見と思われる。こういった視点から、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初は。3次元形状を持つプレート境界面上に複数のL-SSE域パッチを設定し、GNSSで観測されている複雑なL-SSE発生のセグメンテーションやL-SSEの伝播現象を説明する、速度状態依存則に従う摩擦パラメータ分布の初期モデルを構築し、アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)を用いたデータ同化により、摩擦パラメータ分布の更新およびすべり発展予測を行う予定であった。
ところが、今回の研究で新たに発見したように、全くパッチを設定しない一様な摩擦分布を持つ横長のL-SSE域でもSSEが分裂発生することが分かった。そのため、今後はパッチ設定を行うモデルと一様摩擦特性モデルの比較を行うと同時に、両モデルを組み合わせたモデル構築を行う予定である。
まず3次元形状モデルで一様な摩擦特性モデルを考え、実際のGNSS観測が説明されるか調べる必要がある。次に観測に合わない部分をパッチモデルで説明するを必要がある。この2段階法で初期摩擦モデルを構築して、EnKFデータ同化手法によりGNSS観測データを説明する摩擦パラメータ分布推定およびすべり発展予測に挑みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の状況の下で、日本地震学会秋季大会のみ現地開催で、他の日本地球惑星連合2022年大会等はハイブリッド開催で旅費を要しなかった。また、研究打ち合わせもzoom等で行ったため出張旅費を必要としなかった。
次年度は最終年度であるので、できればこれまで得られた研究成果のまとめを行いたい。そのためこれまで生成した大量のデータやプログラムコートを保存する大容量ハードディスクを購入し、論文等にまとめたい。
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