研究課題
桜島大正噴火は20世紀国内最大規模の噴火である.当時の測候所にあったグレイ・ミルン地震計にて噴火に前駆した地震が観測されている.Omori (1920)により前駆地震の発生頻度や震度についてまとめられている.噴火開始までに発生した400個の地震についてOmoriの震度を林(2003)の震度―マグニチュード換算式を参考にした換算にてマグニチュード換算を行った.そしてマグニチュードーエネルギーの換算式にて1時間あたりの地震エネルギーと前駆地震の積算地震エネルギーを推定した.噴火の30時間前から29時間前では10**11 J/hourであったが,噴火の25から22時間前では最大で6x10**13 J/hourであった.そして,21時間前から噴火開始1時間前までは最大で10**12 J/hourであった.噴火1時間前は2x10**10 J/hourとエネルギーが減少したことが分かった.積算地震エネルギーは1.3x10**14 Jと推定された.世界中の事例調査から,噴火に前駆したもしくは地殻変動をともなった火山構造性地震の地震モーメントと噴出量もしくは地殻変動源の体積変化量の関係式を導出したWhite & McCausland (2016)が論文に掲載したデータにそれ以降の事例を追加して,地震モーメントと噴出量・体積変化量との関係式を導出した.大正噴火の前駆地震の積算地震エネルギーから求めた積算地震モーメントは2.6 x 10**18 Nmで,前述の関係式から噴出量を推定すると1億立方メートルとなる.一方,この値は噴出した溶岩と火砕物の体積の20億立方メートルに1桁足りないことがわかった.さらに,前駆地震の地震モーメントと噴出量との関係式にてインドネシア・メラピ火山における火砕流のポテンシャル体積の推定を行った.
2: おおむね順調に進展している
桜島大正噴火について調べることができた.
国内外の他の火山の噴火事例もしくは噴火未遂事例について地震データを収集して地震エネルギーもしくは地震モーメントの推定を進めていく.
当初予定していた研究打合せを別途出張と併せて実施したため,旅費がかからなかった.
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Disaster Research
巻: 14 ページ: 6~17
10.20965/jdr.2019.p0006
巻: 14 ページ: 51~60
10.20965/jdr.2019.p0051