研究実績の概要 |
室戸岬ハンレイ岩体は,約1400万年前に起こった瀬戸内-外帯地域火成活動の最南端に位置し,足摺岬や潮岬に分布する火成岩とともに「外縁帯」(高橋,1980)を構成する。室戸岬や潮岬に露出するハンレイ岩やドレライトは,海嶺玄武岩に類似した全岩化学組成を示すことから,四国海盆拡大軸の沈み込みに伴う海溝近傍火成活動の産物と考えられている(Miyake, 1985; Kimura et al., 2005; 溝口ほか, 2009など)。本年度は,室戸岬ハンレイ岩体の野外調査を実施し,玄武岩質マグマの貫入境界で起こった現象(貫入機構,熱移動,相変化)を,時系列に読み解くことを目指した。室戸岬東方の御厨人窟周辺では,ハンレイ岩体・堆積岩境界が長さ約100 m,幅約30 mに渡ってほぼ連続的に露出しているため,産状や岩石組織の変化を二次元的に追うことが可能である。野外調査と岩石記載の結果,ハンレイ岩体-堆積岩境界部にはぺぺライト(未固結堆積物中に貫入したマグマが急冷される際に生じる,堆積物と火山岩礫の混在部)が発達するとともに,ハンレイ岩体周辺部に石英長石質の細脈が少なくとも125本存在することがわかった。これらの石英長石質脈の一部は,周囲の堆積岩から連続する砕屑岩脈である。また,砕屑岩脈やハンレイ岩体と接する堆積岩の一部には,珪長質メルトからの結晶成長を示す花崗岩組織が認められた。これらの観察事実から,苦鉄質マグマは未固結堆積物中に貫入し,堆積物の流動化と,堆積物の部分溶融をもたらしたと結論づけられる。
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