研究課題/領域番号 |
18K03788
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
今山 武志 岡山理科大学, 付置研究所, 准教授 (90551961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒマラヤ造山帯 / 変成作用 / 部分溶融 / 大陸衝突帯 / 変成圧力-温度―時間経路 |
研究実績の概要 |
ヒマラヤ形成初期の大陸衝突帯初期プロセスを解明するために、北西インド(Uttarakhand地域)の変成岩類の変成圧力-温度条件の空間分布と変成年代の推定を、地質温度圧力計、相平衡計算、石英ラマン圧力計およびジルコンのウランー鉛年代測定法を用いて実施した。 その結果、1)主要な断層帯であるMain Central Thrust(MCT)付近で逆転温度構造が観察されること、2)MCTの直上で最高変成圧力(約13-14 kbar)を示すこと、3)変成岩類は主に漸新世(約32-34 Ma)に藍晶石を含む中圧型変成作用を広域的に被っていること、4)これらの変成作用は、流体に飽和した部分溶融を伴っていること、5)高ヒマラヤ帯変成堆積岩類の原岩は、原生代後期に堆積して古生代初期の花崗岩や正片麻岩によって貫入されていることが明らかになった。 1)、2)の結果は、MCTの活動により、断層の上盤直上に深部から変成岩が急激に上昇したことを示唆している。3)、4)の結果は、Uttarakhand地域の変成岩類は、地殻厚化によるバロウ型変成作用が起きた漸新世の時期にも部分溶融を被っていたことを示唆しており、ほとんどの部分溶融は中新世初期に起きたとされる従来の考え方とは対照的である。5)の結果は、ネパールなどのヒマラヤ他地域の高ヒマラヤ帯の原岩年代や正片麻岩類の結果と調和的であるが、本研究地域は非変成の古生代初期花崗岩類が卓越しているという点が特徴的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、北西インド(Uttarakhand地域)の変成岩類の変成圧力-温度条件の空間分布と変成年代の推定は確実に進んでいる。ヒマラヤ変成岩類が大陸衝突後初期に被った熱履歴の推定は、その後の中新世初期の熱改変のために容易ではないが、詳しいフィールド調査や岩石学的・年代学的研究アプローチにより、漸新世の中圧型変成作用が流体に飽和した部分溶融を伴っていることを解読することに成功した。また、主要な断層帯であるMCTの挙動やその周囲の変成岩類の熱履歴も、フィールド調査や変成岩岩石学アプローチにおいて、確実に成果を得られている。そのため、現在までの進歩状況は概ね予定通りである。 一方で、Uttarakhand地域は、高ヒマラヤ上部にJhala Normal Fault (JNF)と呼ばれる正断層センスの断層が知られているが、この断層の挙動や周囲の変成岩類に与えた熱履歴の影響は未だ不明点が多い。また、MCTを貫入する優白質花崗岩を新たに発見したが、その起源は現在までのところ不明である。
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今後の研究の推進方策 |
Uttarakhand地域高ヒマラヤ帯上部のJNFの挙動とその周囲の変成岩類に与えた熱履歴の影響を明らかにするために、JNFの構造地質学的研究を実施して、高ヒマラヤ帯上部の変成岩類の熱履歴の解明を行なう。また、MCTに貫入する優白質花崗岩は、ヒマラヤ造山帯で最も若い花崗岩類の一つである可能性があり、その起源を明らかにするためにジルコンのウラン-鉛年代を実施する。 北西インドの超高圧型変成岩類(Tso Morari地域)の後退変成作用と昇温期中圧型変成岩類の区分を行うために、2019年7月にTso Morari地域の地質調査をインド工科大学ボンベイ校の研究グループと共同で実施する。採取した超高圧型変成岩類と中圧型変成岩類の変成圧力-温度-時間経路を詳しく推定する。超高圧変成岩類が上昇時に被った後退変成作用の時期は、周囲の昇温期中圧型変成作用の時期より古いことが予想されるため、それらに基づいて両者の時空間分布を明確にする。また、超高圧変成岩類の起源を推定するために、ジルコンのウラン-鉛年代とHf同位体比測定などを実施する。
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