研究課題/領域番号 |
18K03790
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
本吉 洋一 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (90211606)
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研究分担者 |
廣井 美邦 国立極地研究所, 研究教育系, 外来研究員 (40019427)
白石 和行 国立極地研究所, その他部局等, 特任教授 (90132711)
川嵜 智佑 愛媛大学, 理学部, 研究員 (50136363)
土谷 信高 岩手大学, 教育学部, 教授 (50192646)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アダカイト / 海洋地殻 / 層状斑れい岩 / 高圧変成作用 / 大陸地殻 / 三波川変成帯 / 高温高圧実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、珪長質マグマの生成をマントルに沈み込んだ含水鉱物に富む変成岩の脱水部分融解過程によって説明しようとするものである。2019年度は、その研究対象として、変成を受けた層状斑れい岩の記載岩石学的および実験岩石学的研究を進めた。研究試料は、前年度に四国愛媛県新居浜市近郊の四国三波川帯から採集し、偏光顕微鏡観察ならびに島根大学理工学部において蛍光X線分析を終えていた。 本年度は、さらに国立極地研究所においてX線マイクロアナライザを用いた鉱物化学分析ならびに元素組成マッピングを行うとともに、採集岩石を出発物質として山口大学大学院創成科学研究科に設置されているピストン・シリンダー装置を用いて高温・高圧実験も行い、岩石を部分溶融させた際の鉱物組成や鉱物共生の変化について比較検討を行った。 全岩化学分析の結果、三波川帯の変班れい岩は、著しくAl2O3成分に富むことから斜長石の濃集した斜長岩的なものであったことが示唆される。他の鉱物として、少量の藍晶石、ざくろ石、石英、パラゴナイト、ゾイサイトが確認された。高温・高圧実験条件である18kbar・900°Cでは、過剰な水があれば、ゾイサイトは他の鉱物と反応してざくろ石やコランダムを生成するが、灰長石は生成されないと予測される。しかし本実験の結果、ゾイサイト、パラゴナイトは完全に消失し、ざくろ石、コランダム、灰長石、石英の生成が確認された。これはCaO-Al2O3-SiO2-H2O系以外の成分(MgO, FeO, Na2Oなど)の影響と過剰の水がないことで、斜長石+ざくろ石+藍晶石+石英と灰長石の双方の組み合わせの安定領域が拡大したためと解釈される。さらに実験カプセル内では、コランダムと石英が異なる領域に出現しており、系の中でSiO2に過剰な場所と不飽和な場所が生じていたことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施した試料採集や偏光顕微鏡観察、全岩化学分析結果をもとに、2019年度はより詳細な解析を行うべく、X線マイクロアナライザを用いた鉱物化学分析や元素マッピング、さらに採集試料を出発物質とした高温高圧実験も実施できた。これらは、本研究課題の当初から計画されていた項目であり、また研究を進める上で必要不可欠な基本情報でもあったが、ほぼ予定通りに実施することができた。 また鉱物化学組成や高温高圧実験結果から、これまで定性的に推定されていた斑れい岩が高圧変成作用を受けた結果としての鉱物共生の変化やその際の物理条件の推定、鉱物間の化学反応やメルトの発生などについても新しい知見が得られた。具体的には、変斑れい岩の原岩が斜長石を主体とする斜長岩的なものであったこと、それらが変成を受けて含水鉱物が生じたこと、また過剰の水の影響で灰長石は分解せず、ざくろ石、藍晶石、石英、メルトとともに安定に存在したこと、また、高温高圧実験においては、CaO-Al3O3-SiO2-H2O系での結果と、天然の岩石を用いた結果との対比から、他の成分の影響や過剰の水の影響についても予見することができた。これらの結果は、定性的な予見に対して、定量的な検証が進んだことを意味する。 以上のことから、本研究課題ほぼ計画通りに進捗したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、研究課題の最終年度にあたることに鑑み、これまで得られたデータの取りまとめを目指す。とくに、斜長岩的な斑れい岩が変成して含水鉱物を含み、それが部分融解することによってざくろ石と斜長石、さらに藍晶石も形成されることが実証できたことは、天然の同様の岩石の形成過程をほぼシミュレートできたものと評価する。岩石の形成条件をより具体的に検証するために、天然の岩石中の鉱物共生と鉱物化学組成から推定される温度・圧力条件と、高温・高圧実験条件で生成された鉱物共生を相平衡解析プログラムで詳細に比較検討する。 取りまとめに必要なデータはほぼで揃いつつあるが、今後検討すべき点は、高温・高圧実験の結果生成されたメルトがアダカイト質でない点がある。これについては、層状斑れい岩から生じたメルトが、他の部分で生じたメルトと混合してマグマになる可能性も含め、そのメカニズムについては未解明であるので、さらなる検討を行う。 アダカイト質マグマの成因は、大陸地殻の成因や発達に直結する重要な課題であり、その点を中心にすえながら、これまでの南極地域での調査結果とも対比しつつ、新たなマグマ成因プロセスの解明を目指して研究を推進し、出来るだけ速やかに論文化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、以下の2件の国際シンポジウムで、本研究課題に関わる成果発表を予定しており、そのための参加経費と旅費は本研究費から執行予定であった。 1)第13回南極地学国際シンポジウム(7月、韓国・インチョン)、2)ゴンドワナ超大陸の進化と分散に関する国際シンポジウム(11月、高知) 1)については、大会組織委員会から招待講演のオファーがあったので、登録料、航空券、宿泊費については経費負担がなくなった。また2)については、こちらのスケジュールの都合で参加を断念したため、これらの出張経費が余剰金として残った。翌年度については、研究代表者が定年退職となったので、データ整理のためのアルバイトの雇用経費、追加分析のための経費として執行予定である。
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