研究課題
本研究の目的は、アダカイト質マグマの成因として従来有力であったMORBの部分溶融に加え、海洋地殻の主要部分である層状斑れい岩の部分溶融が主要な要因ではないかとの発想から、その可能性を記載岩石学的、鉱物学的、実験岩石学的に検証することにあった。そのために、典型的な層状はんれい岩である四国三波川帯の藍晶石-ゾイサイト岩を海溝の奥部で変成した海洋地殻の一部とみなし、それを高温高圧実験によって部分溶融させ、生成したメルトと溶け残り物質を詳細に記載するとともに、微量元素を含む化学分析から部分溶融過程ならびにその生成物の化学的特徴、多様性を明らかにすることであった。2022年度は、サンプルの同位体ならびに希土類元素(REE)分析を九州大学のLS-ICP-MSおよびEPMAを用いて行った。これにて当初予定していた分析データはほぼ出揃った。今年度に得られた成果について概略を述べるが、マシンタイムの関係で、分析作業が2023年1月にずれ込んだため、データの解析は現在進行中である。・実験出発物質である変成層状斑れい岩は、ざくろ石、角閃石、ゾイサイト、パラゴナイトから成り、その全岩化学組成から原岩は斜長岩質であると推定される。ただ変成作用を受けて斜長石は残っておらず、元々斜長石に含まれていたSrは、ゾイサイトとパラゴナイトに分配されている。・実験生成物は、ざくろ石、斜長石、藍晶石、石英、ゾイサイト(残留物?)、コランダム、輝石、それにメルトから成る。Srは、斜長石、ざくろ石、メルトに分配されている。なお、実験生成物中に石英とコランダムが共存するが、それらは直接することはない。各鉱物の分布についても、かなり不均質である。・メルト中のSrは725~1128ppm、Yは1.13~1.98ppm、(La/Yb)は16.5~27.8と、含水海洋スラブの溶融によるアダカイトの組成と矛盾しない。
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Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 118 ページ: -
10.2465/jmps.221202
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (accepted for publication)
巻: - ページ: -
10.2465/jmps.221209