研究課題/領域番号 |
18K03797
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 波形インバージョン / 外核 / マントル / 広帯域地震波形 / 液体 / 異方性 / アレイ観測網 |
研究実績の概要 |
外核最上部の構造推定に用いる地震波のフェーズはマントル中の不均質構造の影響を含んでいるため、外核最上部の構造推定を行う際にはマントルの不均質構造とのトレードオフを厳密に考慮することが望ましい。そこで本年度、私たちは外核最上部の構造推定に向けて、マントル中の不均質構造を適切に考慮するために、(1)マントル遷移層の3次元S波速度構造、及び(2)マントル最下部の3次元異方性構造の推定手法開発と構造推定を行った。以下に具体的な成果を示す。 (1)震央距離10~30度のS波トリプリケーションデータを用いてマントル遷移層を含む深さ約300~800kmの領域の3次元S波速度構造推定を行った。中米下のマントル遷移層を推定対象として南米の地震、北米の稠密アレイ観測網のデータを用いた。大量のデータ(数万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、特に震源・観測点補正方法、データの重み付け、逆問題の最適化手法の改善を行った。その結果水平200km鉛直50kmの高い解像度でS波速度異常を解像し、この地域の複雑な海洋プレートの沈み込み様式の理解に貢献した。この成果は査読付き国際論文誌に採択され掲載されている(Borgeaud et al. 2019)。(2)震央距離70~100度の地震波水平2成分(transverse及びradial成分)のS及びScSを含むデータを用いてマントル最下部400kmの3次元異方性構造(鉛直軸対称の異方性を仮定。推定パラメータはS波異方性に関係する2つの弾性定数L及びN。)を推定した。大量のデータ(数十万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、震源・観測点補正方法、データの重み付け等の改善を行った。その結果、既存の手法の100倍以上の解像度での異方性構造推定を達成した。この成果は査読付き国際論文誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論・アルゴリズム開発は概ね順調に進展している。Kawai(2006)の液体中の密度と弾性定数についての偏微分係数の定式化をもとに、ソフトウェアとして実装し、精度チェックを行っている。また、構造推定に用いるデータセットも作成済みであるため、ソフトウェアの精度チェックが終了し次第構造推定に取り組める段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
核・マントル境界(CMB)直下の外核最上部におけるカーネル(感度)を計算し、CMB直下の構造に敏感なフェーズ、周波数、震央距離、時間窓等の関係性を定量化する。このようにして最も高い解像度で推定できる組み合わせを決めた上で、作成済みのデータセットを用いてCMB直下の1次元速度構造を推定する。得られた1次元構造は3次元構造推定のための初期モデルとしてCMB直下の3次元地震波速度構造を推定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は計算クラスターの購入のために1,500千円を使用予定であったが、理学部1号館東棟の建設遅れに伴い、納品する計算機室の割り当てが遅れ、当該年度は1,500千円程度の残額が生じることとなった。計算機室の整備が終了次第、計算クラスターの購入費として使用する予定である。
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