研究課題
外核最上部の構造推定に用いる地震波のフェーズはマントル中の不均質構造の影響を含んでいるため、外核最上部の構造推定を行う際にはマントルの不均質構造とのトレードオフを厳密に考慮することが望ましい。本年度、私たちは外核最上部の構造推定に向けて、マントル中の不均質構造を適切に考慮するために、(1)西太平洋下のマントル最下部の3次元S波速度構造推定、及び(2)液体中の密度と弾性定数についての偏微分係数の定式化をもとに、ソフトウェアを実装した。以下に具体的な成果を示す。これまでの全地球的な内部構造推定の研究では、太平洋下の最下部マントルに大規模なS波低速度領域(LLSVP)が存在することが示唆されてきたが、解像度が低いために、LLSVPが小規模な低速度異常の集合体であるのか、大規模な低速度異常であるのかは明らかになっていなかった。そこで、タイ王国に設置した全40点の地震観測アレイ(TSAR)で観測しデータセットを作成し「局所的波形インバージョン法」を用いて解析した結果、フィリピン海下の核・マントル境界(CMB)上に少なくとも400 km上まで垂直に伸びる高速度異常と、ニューギニア海下のCMB上に直径300 km程度の複数の小規模な低速度異常を発見した。高速度異常は低温の領域に相当し、その位置が約2億年前のイザナギプレートの沈み込み境界の位置と一致していることから、約2億年前に西太平洋の海底で沈み込んだイザナギプレートがCMBまで到達していると解釈した。一方で、低速度異常は高温の領域に相当するため、複数の小規模な低速度異常は小規模な熱的プルームの集合体であると解釈した(Suzuki et al. PEPI 2020)。本研究で作成した液体中の密度及び弾性定数についての偏微分係数計算ソフトウェアを用いて、太平洋下の最下部マントルおよび外核最上部の地震波速度構造を同時に推定する土台ができた。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 311 ページ: 106636
10.1016/j.pepi.2020.106636
Solid Earth
巻: 12 ページ: 171-186
10.5194/se-12-171-2021
巻: 307 ページ: 106544
10.1016/2020.106544